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囲み II-3 ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのために-日本の支援の例

○タンザニア「キリマンジャロ農業技術者訓練センター計画フェーズII」(JICA)

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 この事業の主な目的は、農民や農業普及員などの研修を通じてかんがい稲作の生産性を向上することです。プロジェクトでは研修内容にジェンダーの視点を取り入れました。具体的には、[1]生産(市場価値を伴う活動)と再生産活動(家事など、生産以外の活動)における男女の公平な労働分担、[2]家庭の支出入に対する男女の平等なアクセスと管理、の二点です。
 例えば、薪の採取や田畑の除草作業など、家事と農作業に並行して携わる農家の女性の労働負担が大きいことに着目し、熱効率のよい改良かまどや簡易除草機の導入を促進しました。生産性向上に資する除草機の導入後は、男性も積極的に除草を手伝うようになりました。これらの技術によって作業の負担は軽減され、その分、他の作業ができるようになりました。また、ジェンダー研修により男女間の不公平に対する意識を高めるとともに、男女一緒に家計を管理するための家計管理研修を行いました。こうした取組の結果、農業技術が定着するとともに、男女の労働意欲が上がる効果もあり、プロジェクト目標である稲作の生産性が向上しました。

○バングラデシュ「東部バングラデシュ農村インフラ整備事業」(JBIC)

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 この事業の主な目的は、バングラデシュ東部の貧困農村部を対象に道路や農村市場などのインフラの整備を行うことを通じて、都市と農村の経済・社会格差を是正することです。この事業の中で女性の参加を促進し、これを貧しい女性達の経済的エンパワーメントにつなげていく取組が行われています。
 具体的には、道路整備後の路肩強化に必要な植林や樹木の育成といった作業に女性が携わることができるよう、NGOの支援で女性達のグループが組織され、植林作業などに必要な技術の研修を実施しています。事業では貧困村の女性約2,500人が2年間雇用される予定です。雇用期間中の給与の一部を預金として確保し、この資金を活用して起業するための研修も行われています。また、農村市場の改良にあたっては、市場内に女性用セクションを設け、現在は商店主のほとんどを男性が占めるこの地域社会での女性店主の営業活動を支援します。こうした取組が、農村部の貧しい女性達の収入機会を拡大し、農村部の貧困削減につながることが期待されます。

○「ジェンダーに配慮した予算(GSB: Gender Sensitive Budgeting)立案支援」
 (UNDPパートナーシップ基金)

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 この事業では、政府予算を組む際に女性と男性に与える影響の差異を分析し、ジェンダー平等につながるように予算を計画・実施・評価する、GSBのための各国政府の能力強化を支援しています。欧州・CIS、アジア太平洋などにおいて、政策立案及び実施に関わる政府職員・専門家約90人を対象にGSBの研修を開催しました。この研修を受けた専門家が、ネパール・ロシア・ボスニア・タジキスタンで実際にGSBの実施に向けて作業を進めています。例えばネパールでは、財務省にGSB委員会が設置され、GSBの監査作業が強化されました。ロシアでは、国連女性基金(UNIFEM:United Nations Development Fund for Women)との連携で、地方予算におけるGSB強化の支援が開始されました。GSBはジェンダー平等を促進するための有効な制度支援であり、引き続きこれらの国の取組をフォローアップし、他国においても適用されていくことが期待されます。


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