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3.効果的実施のために必要な事項

(1)評価の充実

 ODAをより効果的・効率的に実施するためには、その実施状況や効果を的確に把握し、必要に応じて改善することが重要です。このような観点から、外務省を含むODA関係各府省、及び実施機関であるJICAJBICではモニタリングや評価を実施しています。従来は個別プロジェクトを中心とした評価を実施していましたが、近年セクターや国別の援助戦略が重視されていることを踏まえ、個別プロジェクトに加えてセクターやスキーム、国別や重点課題別の援助を対象とした評価もあわせて実施しています。また、評価の公平性を確保するため、第三者による評価を行うなど外部の視点を入れるよう努めています。
 2004年度は、国別評価では次期計画策定を控えたバングラデシュ、ウズベキスタン、カザフスタン、エチオピア、ラオスにおける日本の援助を検証しました。特に、日本の援助政策が開発途上国のニーズと整合しているか、援助政策の効果はあったのか、適切な実施プロセスによって援助が行われていたか、といった点を中心に評価を実施しました。バングラデシュの国別評価では、日本が援助の重点として捉えている分野が概ね開発途上国のニーズに合致していることが確認されましたが、同時に、ガバナンスの改善やジェンダー格差の解消などの課題に一層配慮すべきことが提言されました。政府ではこれらの提言を受け、バングラデシュに対する援助の課題を再検討しながら国別援助計画を策定しています。
 重点課題別では、MDGsの中でも重要な位置を占める保健分野・教育分野関連MDGs達成への取組や対人地雷対策支援を対象として評価を実施しました。MDGsに関連する取組については、ODAの上位政策(注)や国際社会の取組との整合性、策定・実施プロセスの適切性・効率性、成果の有効性などについて検証を行い、その結果、日本政府は今後MDGs達成に向けて一層戦略的な支援を実施していくべきことが提言されました。保健分野の評価で出された提言は、2005年6月に策定した「保健と開発」に関するイニシアティブの策定にあたって活用しました。また、対人地雷対策支援についての評価では、日本がこれまで行ってきた対人地雷除去及び犠牲者支援活動が、有効に機能してきたことが報告され、今後も効率的な実施体制を構築しつつ引き続き協力を継続すべきであることが提言されました。
 スキーム別評価では、NGOと合同で日本NGO支援無償の評価を行い、同スキームの実施過程や制度について検証しました。手続きなどに関するNGO側と外務省側双方の改善点や、スキームの運用についての相互理解の促進などが提言され、同スキームの改善を通じNGOと外務省のパートナーシップの強化に努めるよう指摘がありました。
 個別プロジェクトについて、円借款ではすべての完成案件について、計画の妥当性、実施の効率性、効果、インパクト(波及効果)、持続性などの観点から外部評価者による事後評価を実施しています。例えば、インドネシアのコメリン潅漑事業(第2期)は、二次水路及び排水路建設などを行うことにより、米の増産を図り、農民の所得向上を通じた貧困削減に寄与することを目的とする事業ですが、事後評価の結果、農業生産性(単収)の向上、所得の増加、農村経済の活性化といった効果やインパクトが既に確認されました。本事業により新たに開発された受益地区の農業生産性は、完成後2年目の事後評価時点でも上昇を続けており、外部評価者から事業効果が計画どおり発現する数年後に、再度、実施機関が効果発現状況の確認を行うことが望ましいとの提言がありました。
 また、無償資金協力や技術協力についても、個別プロジェクトの評価から得られた提言は新規案件に活用されています。例えば、無償資金協力の事例では、セネガル「小学校建設計画(第3次)」の基本設計調査の事後評価において、教室などの施設建設に加えて、コミュニティ住民や教師、生徒を対象とした施設の維持管理に関する研修を行うことの有効性が認められました。この評価結果は、その後の小学校建設案件の基本設計調査にフィードバックされ、維持管理に関する研修の実施について積極的に検討しています。また、技術協力の事例では、「ケニア中等理数科教育強化計画」において、目標の達成度やプロジェクトの持続性などについて検証を行い、その結果得られた研修など実施における相手側費用の確保のあり方などの教訓が、「ミャンマー児童中心型教育強化プロジェクト」及び「インドネシア初中等理数科教育拡充計画」に活用されています。なお、インドネシアの上記案件では、同案件の中間評価で得られた提言をもとに、活動内容を現場中心型に変更するといった対応が取られています。
 このように、政府では政策から個々のプロジェクトに至るまで幅広く評価を実施し、これらの結果をODAの実施にフィードバックすることによってODAの改善に努めています。無償資金協力の個別プロジェクトの評価については、今後もさらに評価対象件数及び内容ともに拡充していくこととしています。また、政府は、ODAの取組状況について国民に対する説明責任を果たす観点から、これらの評価結果を政府や実施機関のホームページなどで公表しています。


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