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3.中央アジア・コーカサス地域
日本の中央アジア・コーカサス地域に対する2004年の二国間ODAは、約2億9,091万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は4.9%です。
日本は、旧ソ連崩壊後の新たな国際情勢下、中央アジア及びコーカサス地域の地政学的な重要性を考慮し、これら諸国の民主化及び市場経済導入の努力を積極的に支援していくことを目的として、人材育成のための技術協力やインフラ整備、経済改革に伴う困難を緩和するための資金協力を中心とした援助を行っています。
特に、中央アジアは、米国同時多発テロに伴い、テロの温床を回避するためには貧困削減に向けた開発支援が重要であると再認識されたことを受け、急速に注目を集めています。中央アジア各国は、基本的に国際社会のテロとの闘いに協力し、また、アフガニスタン復興を支援する姿勢を示していることから、日本はウズベキスタン及びタジキスタンに、アフガニスタン周辺国としての支援を実施しました。
中央アジア・コーカサス地域の諸国は、計画経済体制から市場経済体制への移行期にある国であり、人材育成と制度づくりといったソフト面での協力が重要です。日本は、2004年度末までにこれら8か国から約3,700名の研修員を受け入れています。また、経済運営、法制度整備支援、通信、金融、環境、運輸インフラ、保健医療分野などの専門家派遣、社会セクター、エネルギー、資源開発分野での開発調査などを通じ、同地域の人材育成と制度づくりを支援しています。また、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスには人づくり支援の拠点として「人材開発センター(日本センター)」を開設しており、これらセンターには日本から専門家を派遣し、日本的経験に基づくビジネスコースや日本語コースを実施するなど、同地域の市場経済化に対応する人材育成に貢献しています。
さらに、日本として、中長期的な視点をもって、同地域に対する積極的外交を志向する中で、2004年8月に川口外務大臣(当時)が中央アジア4か国を歴訪し、[1]中央アジア各国との二国間関係を引き続き増進し、緊密化する努力を一層強化すること、[2]中央アジア諸国のさらなる発展のために地域内協力を促進することなどを目的に中央アジア地域全体との対話を進めることの2つの柱からなる日本の新たな対中央アジア政策を表明しました(中央アジア各国もこれを歓迎、支持しました)。また、右訪問の際に、後者を具体化するものとして、「中央アジア+日本」対話が立ち上げられ、その第1回外相会合がアスタナ(カザフスタン)にて開催されました。同会合では、中央アジア諸国が一つのまとまりをもって、今後さらに発展していくためには、アフガニスタン復興協力、麻薬、テロ、環境、エネルギー、水、輸送、貿易・投資などの地域的課題の解決のために地域内協力を推進することが重要であることにつき確認されるとともに、日本はこうした努力を支持、支援する旨表明しました。また、同対話は種々のレベルで対話を継続することとなり、2005年3月に第1回高級事務レベル会合(於・タシケント)が開催され、今後、同対話は、[1]政治対話、[2]地域内協力、[3]ビジネス振興、[4]知的対話、[5]文化交流・人的交流(観光を含む)の5分野を柱に取り進めていくこととなりました。
コーカサス地域については、複雑な民族構成を背景として、チェチェン、ナゴルノ・カラバフ問題など多くの不安定要因を抱えており、同地域の安定化は日本を含む国際社会全体にとって意義があります。また、カスピ海のアゼルバイジャン沿岸には未開発のものとしては世界最大級の油田があり、かつ南コーカサス地域が当該油田から地中海に抜ける石油パイプラインのルートにあたることから、同地域の安定的な経済発展は国際的なエネルギー安全確保のためにも重要です。2003年11月に「バラ革命」が発生したグルジアについては、同国の民主化、腐敗撲滅への積極的な取組を評価し、グルジア支援国会合(2004年6月、ブラッセル)において同国を引き続き支援することを表明し、今後3年間に約100名の研修員の受入れのほか、2004年度には債務救済の実施、ノンプロジェクト無償資金協力、食料増産援助の供与を実施しています。アルメニア及びアゼルバイジャンに対しては、各々の国において今後予想される深刻な電力需給不足を緩和し、持続的な成長を促進するため、2005年3月(アルメニア)及び同年5月(アゼルバイジャン)に火力発電所を建設するための円借款の供与を行っています。
図表II-28 中央アジア・コーカサス地域における日本の援助実績
