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(8)麻薬

 麻薬などの薬物問題は地球的規模の深刻な問題であり、国際社会が協調して対応を強化していかなければならない問題です。近年、「黄金の三角地帯」(注)をはじめとするアジアでは、合成薬物問題の深刻化に加え、国際的な薬物犯罪組織による密輸が一層巧妙化しており、麻薬などの薬物問題が日本へ及ぼす影響は計り知れません。また薬物は、人々の生存や生活を直接脅かし、さらに国際社会の未来を損なう危険性があるため、「人間の安全保障」の視点からも、日本は国際社会における麻薬などの薬物問題を重視しており、関係国際機関を含めた国際協力のもとでの対策を支援しています。

ケシ撲滅のため、代替作物として日本のソバを栽培している(ミャンマー)
ケシ撲滅のため、代替作物として日本のソバを栽培している(ミャンマー)

 二国間援助としては、日本への薬物の供給源となっている薬物の密造地域などにおける薬物関連犯罪の防止や取締能力向上への支援を行っているほか、薬物問題の背景に貧困問題があることを踏まえ、住民が薬物の原料となる植物(ケシなど)の栽培に頼らず生活できるようにするため、貧困脱却のための代替開発プロジェクトを通じた支援や、NGOを通じた支援などを実施しています。2004年度は、タイを拠点とし、タイ及び周辺国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)の薬物分析技術の向上及び分析結果を活用した薬物取締能力の向上を支援する「タイ薬物対策地域協力プロジェクト」を実施し、各国において薬物取締り及び薬物分析に係るセミナーなどを行ったほか、各国からの研修員を受け入れ、本邦研修も実施しました。さらに、フィリピン薬物取締庁(PDEA:Philippine Drug Enforcement Agency)の薬物取締能力向上を支援する「フィリピン薬物法執行能力向上プロジェクト」や、インドネシア国家警察改革支援プログラムの一環として、薬物対策に係る能力向上を支援する「インドネシア薬物対策プロジェクト」を実施しています。
 また、日本は、国連麻薬委員会などの国際会議に積極的に参加するとともに、国連薬物犯罪事務所(UNODC:United Nations Office on Drugs and Crime)が管理・運用する国連薬物統制計画基金への資金拠出を毎年行っており、2004年度は約304万ドルを拠出しました。この資金を利用し、東南アジアの国境における不正薬物取引の取締強化、押収した薬物、特に覚せい剤を分析する手法の訓練、ミャンマーのケシ栽培に依存している農村の開発、中国における薬物取締能力強化などのプロジェクトに対する支援を行いました。さらに、カンボジアで急増している違法薬物の乱用、及び薬物使用時の針の共用などがコミュニティにもたらす脅威に対応するために、UNODCが実施する「薬物乱用に対するカウンセリング・治療・リハビリ対策」に対し、人間の安全保障基金を通じて支援を行いました。


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