本文 > 第II部 > 第2章 > 第2節 > 3.地球的規模の問題への取組 > (3)人口
(3)人口
世界の人口は過去50年で倍増し、2004年には63億7,800万人(注1)に達しています。人口問題は、地球環境や食料、エネルギー問題とも関連する地球的規模の問題です。世界の人口平均増加率が年1.2%であるのに対して、一般的に開発途上国の中でも貧しい国ほど人口増加率が高く、人口増加が貧困・失業、飢餓、教育の遅れ、環境悪化などの問題に大きな影響を与えており、対応が急務となっています。例えば1人当たりGNIが610ドルと低いブルンジでは3.1%、紛争が続くソマリア、リベリア、アフガニスタンではそれぞれ4.2%、4.0%、3.9%となっています。
人口問題には、個人の健康、福利厚生といったミクロ・レベルと人口数の増加・減少といったマクロ・レベルの問題の両面への対応が求められます。日本は、開発途上国への支援に際し、リプロダクティブ・ヘルス/家族計画などの直接的な支援とともに、基礎的保健医療、女子の基礎教育やジェンダーなどを含めた支援を行っています。また、人口分野では専門知識や国際的ネットワークを有する国際機関などを通じた支援も特に有効であり、2004年度にはUNFPAに対して44億円、IPPFに対して17億円の拠出を行いました。これらの機関は、妊産婦の健康改善、母子保健の推進のために支援を行うほか、開発途上国の国勢調査など人口関連のデータ収集・分析、女性の能力強化、世界全体で12億人を超えるといわれる思春期の若者を対象とした啓蒙活動などを行っています。
2004年度には、ミャンマーにおけるリプロダクティブ・ヘルスの広報教育活動、ラテンアメリカ及びカリブ地域の思春期の若者を対象としたリプロダクティブ・ヘルスに関する教育プログラムの強化、タイ・ラオス国境メコン川橋梁労働者へのHIV予防活動などで日本のNGOが協力しています。
また日本は、UNFPAが実施する子宮膣ろう撲滅キャンペーンと連携する形で、サブ・サハラ・アフリカ、南アジア及びいくつかのアラブ諸国に広く見られる遷延分娩(注2)及び分娩停止による子宮膣ろうに苦しむ女性を救うため、人間の安全保障基金を通じてナイジェリア、パキスタン、マリで実施された「分娩による子宮膣ろうの予防と治療のための能力強化プロジェクト」を支援しました。このプロジェクトの実施により、子宮膣ろうの予防・治療が促進され、安全な出産の実現がはかられることが期待されます。
2004年は、カイロで開催された国際人口開発会議(ICPD:International Conference on Population and Development/カイロ会議)の10周年にあたることから、日本もメンバーである国連人口開発委員会やUNFPAの執行理事会を通じて、ICPD行動計画の実施促進とMDGs達成に向けた国際社会の取組を促進し、人口と開発、リプロダクティブ・ヘルス、ジェンダーの平等についての議論に積極的に参画していく方針です。

基礎衛生キットを受け取る女性

UNFPAと日本の協力で作られた基礎衛生キット 津波支援の際には、女性のリプロダクティブ・ヘルス・ニーズ(生理用品や女性用下着など)に対応した援助を行った。(写真提供:UNFPA)