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(4)IT(注)

 近年目覚ましい発展を遂げているITの普及は、産業の高度化、経済の生産性の向上などを通じて持続的な経済成長の実現に寄与します。またITは、政府の情報公開の促進やメディア支援を通じた民主化の土台となるガバナンス改善や市民社会の強化といった面でも、重要な役割を果たしています。反面、ITを活用可能な人々とそうでない人々との格差、すなわち情報格差(デジタル・ディバイド)は、先進国・開発途上国間の経済的格差を一層増幅させ、国際社会の安定を揺るがしかねない問題となっており、その解消を図ることが極めて重要な課題となっています。
 日本は、2000年7月の九州・沖縄サミットにおいて「国際的な情報格差問題に対する我が国の包括的協力策について」を発表しました。日本政府は、この協力策において、発表後5年間で合わせて150億ドル程度を目途に非ODA及びODAの公的資金による協力を進めることを表明しました。なお、ITは基本的に民間主導で発展する分野であることから、上記協力策の大部分は民間ベースのプロジェクトを支援するJBICによる投資金融や輸出金融、アンタイド・ローンなどの非ODAによる協力が中心になります。そして、ODAによる協力は開発途上国におけるインフラ構築や人材育成など民間ベースになじまない分野に関する協力に充てることとしています。こうした考えのもと、日本は、[1]制度・政策づくりへの知的貢献、[2]人づくり、[3]情報通信基盤の整備・ネットワーク化支援、[4]援助におけるIT利用の促進、の4つを柱として、非ODAを含む公的資金による協力を進めています。
 2003年3月に日本は、アジアにおけるブロードバンド環境の整備に向けた行動計画として、「アジア・ブロードバンド計画」を策定しました。本計画は、2010年を目標年次とし、アジアのすべての人々がブロードバンドにアクセスできることなど7つの事項の実現を通じ、アジアが世界の情報拠点となることを目指したものです。日本は、本計画の推進に向け、これまでにタイ、マレーシア、ベトナム、インドネシア、カンボジア、フィリピン、中国、インドとの間で二国間の、中国・韓国との間で多国間の協力を行うことを合意しており、この合意に基づき政策対話を実施し、相手国の要望などの把握に努めています。本計画に基づき、ベトナム、イラク、カンボジアにおいてインフラ整備の支援、光ファイバーなどを利用したブロードバンドネットワークを用いたアジア諸国との共同実験などの技術開発やアプリケーションの普及、さらに技術協力プロジェクトや研修・セミナーの開催、アジア各国政府や国際機関への専門家派遣などによるIT分野の人材育成に重点的に取り組んでいます。
 また2003年7月に第19回IT戦略本部で決定されたe-JapanII戦略において、「アジアITイニシアティブ(AITI:Asia IT Initiative)」が提起されました。本イニシアティブの枠組みのもと、各国のIT分野での人材育成プログラムに対する各種支援を実施しています。具体的には、フィリピンにおいて、情報処理技術者試験に準拠した研修及びIT能力の向上を目的とした研修を実施しているほか、当該試験実施機関の能力向上のための専門家派遣を実施しました。ベトナムにおいては、ベトナムの教育界のレベルアップ及び産業発展のために、情報処理技術者試験に準拠したIT教育のカリキュラムを活用して、日本及びベトナムの高等教育機関における中長期プログラムを中心に、各種短期研修などを含めた総合的な人材育成プログラムの構築に向けて取り組んでいます。
 また、2004年9月に第27回IT戦略本部で決定された「アジアを中心としたIT国際政策の基本的考え方」に基づき、ODAの要請から実施までの期間短縮のための標準処理期間の設定、調達における一括発注、本邦技術活用条件制度における「本邦資機材」の対象範囲の明確化、協力対象となるシステム立ち上げ経費の定義の明確化といったIT分野におけるODAの制度及び運用の改善を図りました。さらに2005年2月に第29回IT戦略本部で決定された「IT政策パッケージ-2005」においては、アジアを中心としたIT国際政策に係る重点施策を策定し、公的資金の活用といった政府の支援において重点化を図るなど、十分配慮することとしています。
 日本は、今後も、産学官の連携のもとに、アジア各国の政府や国際機関とも協調しつつ、IT分野の取組を積極的に行っていくこととしています。


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