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2 ジェンダー平等推進と女性の地位向上(目標3)

 女性は、世界で貧困状態にある11億人の約7割を占め、世界の非識字者の約3分の2を占めるなど、男性と比較して低い境遇にあるといえます。また、男女の社会的・経済的な格差や慣習による役割分担が存在するために、開発課題におけるニーズにおいても、その対策が及ぼす影響においても、女性と男性では違いがあります。こうしたことから開発援助にあたっては、女性を支援する取組を行うと同時に、女性やジェンダーの問題を直接の対象としない取組もジェンダー平等の視点から検討することが重要です。
 日本は、1995年に「「途上国の女性支援(WID:Women in Development)イニシアティブ」を発表して以降、女性の教育、健康、経済社会活動への参加という3分野を中心に支援を行うとともに、女性の開発プロセスへの統合に努めてきました。1996年から2003年までの8年間で、累計約72億ドル(約8,000億円)がこの分野に関連する支援に充てられています。2003年に改定されたODA大綱においても、男女共同参画の視点と女性の地位向上をODAの基本方針として明記しています。さらに2005年3月には、ジェンダーの視点をODAのあらゆる段階・分野に盛り込むとともに、開発途上国のジェンダー平等と女性の地位向上に向けた取組への支援を強化するために、「WIDイニシアティブ」を改定して「ジェンダーと開発(GAD:Gender and Development)イニシアティブ」(詳細は第2部第1章第1節)を新たに策定しました。

■アフガニスタン女性の地位向上に向けた取組
 約半数の人々が栄養失調に苦しむ世界最貧国の一つ、アフガニスタンでは、女性はタリバン政権のもとで長年就学や就業の機会を奪われるなど、差別的な扱いを受けてきました。2004年の時点で、同国の妊産婦死亡率は50人に1人が死亡するという世界で最悪の状態にあり、女子の就学率についても40%と低レベルにとどまっています。また、15歳以上の女性の非識字率は約80%と世界で3番目に高く、女性の職業は教育・医療分野にほぼ限定されています。さらに、過去20年余りに及ぶ紛争で配偶者が死亡した女性や貧困女性には、生計を立てる手段がほとんどないという現状です。
 こうした状況に対し、日本はアフガニスタンの女性の地位と生活の向上を目的として、ジェンダーの視点に立った政策・制度づくりを支援してきました。(注1) 例えば、ジェンダー平等に向けた取組を進めている新設の女性課題省に対し、2002年から9名の専門家を派遣し、同省の政策立案能力の強化に協力しています。日本の専門家は、女性課題大臣への助言、関係機関との連携、女性の能力強化に関する情報収集と支援策の検討、取りまとめ、提言などを行っています。こうした日本の協力を受け、女性課題省は、ジェンダー主流化(注2)のための各種政策を立案するようになっています。また、2004年1月に採択されたアフガニスタンの新憲法では、男女平等、女性の政治参加の権利の保障、高等教育レベルまでの女性参加の保障が盛り込まれました。この新憲法起草の過程においては、日本から専門家を派遣し、憲法に規定された女性の権利保障について日本の経験を説明しました。

レーズン工場で働くアフガニスタンの女性達。女性の就業機会も増えてきている。
レーズン工場で働くアフガニスタンの女性達。女性の就業機会も増えてきている。

 さらに2005年2月には、女性の権利を回復し、特に保守的な地方の貧しい女性の経済的自立を図るために、地方と中央政府の能力を強化することを目的とする「女性の経済的エンパワーメント支援プロジェクト」を開始しました。このプロジェクトは2008年までを予定し、女性の経済活動に従事する機会と職業選択の自由の拡大を目指し、比較的治安の安定しているアフガニスタンの3州(バーミヤン州、バルフ州、カンダハル州)においてコミュニティ開発を行っています。具体的には、女性課題省の出先機関である各州の女性局と協力し、女性の組織化や起業支援を行っています。さらに、女性課題省が州女性局を通じて地域の女性の課題や要望を把握し、関係省庁・他機関との連携のもと女性の経済活動が促進されていくための環境整備を支援しています。このプロジェクトに参加した専門家も、「アフガニスタンは多民族で地域の特徴も様々。地域の女性のニーズや思いを反映した活動の展開と、そうした活動が可能になる社会的基盤を整える力になりたい」と語っています。
 以上のように日本は、個別のプロジェクトのみならず政策の面でもアフガニスタンのジェンダー平等に向けた取組を支援し、女性が安全で尊厳のある生活を送れるような社会づくりに貢献していきます。


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