column II-17 在外公館で経済協力を担当して~在タンザニア大使館横林経済協力・経済班長

在タンザニア大使館にて。横林経済協力・経済班長。
タンザニアでは、毎月第1火曜日、DPG(Development Partners Group)といわれる援助国などの月例会合が開かれます。この会合には、日本も含め、タンザニアで開発援助に携わる援助国や国際機関の代表が出席し、同国への支援に関してその時々の重要課題が検討されます。タンザニアはサブ・サハラ・アフリカの中で最も援助協調 注1)が進んでいる国の一つです。DPGでは、各種の会合で協議された内容が調整され、取りまとめられるとともに、重要課題についてタンザニア政府と協議を行う窓口ともなっています。
8月2日午前10時。朝の挨拶も早々に切り上げ、少し緊張した面持ちで各々自分の席を確保。いつもより張り詰めた空気が漂っているのは、今日の主な議題が、タンザニア政府が7月上旬に発表した、共通支援戦略(JAS:Joint Assistance Strategy)だからです。このJASは、「共通」という名前が示す通り、各ドナーがそれぞれ独自に対タンザニアの援助計画を作成するのではなく、援助の課題や実施手段に関して同国政府とドナーの間で共通の戦略を持とうとする、野心的な試みです。したがってJASは、多くのドナーに少なからず譲歩を求める内容となっており、ドナー間での思惑の違いや利害の対立が予想されるのです。
この日の会議に先立ち、日本の在タンザニア大使館は、JASに対して同じような立場を取る他のドナーとあらかじめ協議を行いました。その協議では、JASが我々ドナーに突きつけている課題 注2)に対し、それぞれの意見を述べ、DPGの会合で発言するポイントを整理しました。JASに関する議論が始まるやいなや、「今の内容では署名は出来ない」、「政府のオーナーシップを尊重すべきだ」、「いや政府側の考え方に一貫性がない」など、白熱した議論が交わされました。
タンザニアのように、援助協調が積極的に行われている開発途上国においては、開発途上国や援助国の間で考え方やアプローチ、具体的な取組について調整しながら援助を実施しなければならず、自国の立場ばかりを主張するわけにはいきません。その代わり、開発途上国政府のオーナーシップに基づいた提案であれば、どのようにすればその内容をより良いものとし、かつ少しでも多くのドナーが参加して協調できるようになるのかを考えていくことが求められます。時には自国の援助実施方法の変革を伴うものとなる場合もありますし、専門的議論を行うために必要な人材を確保することも不可欠です。援助の国際潮流を見据えながら、自国が過去に積み上げてきたやり方に安住することなく、日本の存在感を示していくことの難しさを、日々痛感しています。
注1)援助資金を効率的に活用するために、開発途上国のオーナーシップのもとに、ドナー同士が援助の実施に際して調整を行う活動。
注2)[1]援助全体に占める一般財政支援の割合を5~7割に引き上げること、[2]比較優位のないドナーにはセクター支援から撤退してもらうこと(ドナー間の分業)、[3]技術協力についてはアンタイドとすることなど。