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9 デンマーク
(1)援助政策等
デンマークは、1985年3月にGNPの1%を援助額の目標とし、これを段階的に実現するとの国会決議を行って以来、これを着実に実施し、1992年以降はGNP比1%を毎年度達成し、国民一人当たりのODAでは世界一のレベルを維持してきた。
しかしながら、2001年11月に発足したフォー・ラスムセン内閣(自由党・保守党連立)以降、1%原則にはこだわらずODA予算の総額を1999年レベルに抑えるとの公約により、2008年までの間はODA予算を毎年115億デンマーク・クローネに固定することが決定されている。結果として2002年度にはODA予算はGNI比0.96%と10年ぶりに1%を割り、さらに2003年度は、インドからの債務返済の影響もあり、0.84%まで落ち込んだ。2004年度は、0.84%のレベルを維持することが見込まれている。ただし、デンマーク政府は、国連目標値である対GNI比0.7%の実現を重視しており、EU加盟国をはじめとする他の先進国に対して目標実現を働きかけている。
また、2003年6月、ラスムセン内閣は2004年から2008年のODA新方針「別なる世界を求めて」を策定した。この方針では、これまで同様、貧困が世界の安定と開発の脅威になっているとの認識の下、貧困削減をデンマーク開発援助の主要目標に掲げている。国連ミレニアム開発目標(MDGs)の達成も視野に入れ、援助の重点分野として、[1]人権、民主化、良い統治、[2]安定、安全保障、テロとの闘い、[3]難民、人道援助、[4]環境、[5]社会経済開発の5つを挙げている。この中で、デンマーク政府は、西側諸国とアラブ諸国との間の認識のギャップから生じる脅威を取り除くため、アラブ諸国の民主主義の発展を促し、基本的人権を確保していくためODAを活用していく、貿易と開発、開発分野における民間部門による一層の関与を重視していく等の方針を示している。
2004年度ODA予算における二国間援助と国際機関を通じた援助の割合は約6:4となっている。ODAの50%以上が最貧国向けであることがデンマーク開発援助政策の大きな特徴であり、その結果、ODAの約60%がアフリカ諸国に充てられている。
二国間援助については、デンマークは途上国15か国(バングラデシュ、ベニン、ブータン、ボリビア、ブルキナファソ、エジプト、ガーナ、ケニア、モザンビーク、ネパール、ニカラグア、タンザニア、ウガンダ、ベトナム、ザンビア)をプログラムカントリーに選定し、集中的な援助を実施しているが、今後ブータンとエジプトはプログラムカントリーから外れることが決定されている。プログラムカントリー以外の二国間援助も開発及び環境の両方で行われている。
国際機関を通じた援助については、世界銀行をはじめとする開発銀行、UNDP、EUなど数を限定した国際機関を通じ、人口及びHIV/AIDSを含めた保健、農業と食糧、環境問題及び人道援助に重点を置いて活動を行っている。さらに、貿易や女性参画といった分野についても支援を強化している。
そもそもデンマークの高いレベルでの開発援助は、同国外交の基本姿勢である人道主義、人権尊重主義に基づくものであり、1971年には援助基本法たる「国際開発協力法」が制定されている。これは、ODAの目的、実施機関、議会との関係、技術協力、資金協力、広報活動、文化協力、開発研究などに関し、援助のガイドラインを簡潔簡略かつ広範に定めたものである。
(2)実施体制
外務省南総局が途上国全般の業務を担当しており、その中で開発援助に関わる業務を実施している。これらのデンマーク政府による国際開発援助活動はDANIDA(Danish International Development Assistance)と呼称されている。DANIDAは、従来援助の実施機関であった国際開発協力庁(外務省南総局の前身)の略称であったが、1991年の組織改編により同庁が廃止されたのに伴い、「Agency」を「Assistance」に改め、デンマークの開発援助システムを指すものとして使われるようになった。
1993年から2001年のニューロップ・ラスムセン内閣(社会党・急進自由党連立)時代には外務省は外務大臣及び開発協力大臣の2大臣制を採用していたが、2001年のフォー・ラスムセン内閣の成立後、開発協力大臣のポストは一旦廃止され、外務大臣が開発援助についても担当するようになったが、その後、2004年8月の内閣改造で再び開発援助大臣が設けられ難民移民相が兼務している。
特徴としては、効果的な援助を実施するため、意思決定プロセスにおいて外務本省による中央集権化を避け、プログラムカントリーの在外公館に分権化する方向にある。また、2004年1月からは、EU調達令に沿い、公開入札方式を取り入れることで援助のアンタイド化を図り、資金の有効活用を目指している。二国間援助の約15%は、デンマークのNGOを通じて行われているが、今後は2000年に発表された市民社会戦略に沿って、少数の専門的団体から、小規模でも現地事情に精通している団体へ幅広く資金を提供していく方針である。さらに、外務省南総局内に実施中の援助事業の質を確認する部署及び事業実施後の評価報告を行う事業評価事務局が置かれていることもデンマークの開発援助実施体制の特徴のひとつである。


