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10 ノルウェー

(1)援助政策等
 ノルウェーは、2002年の開発援助開始50周年に際して、今後のノルウェーの開発援助に対する取組の基本的な姿勢を示すものとして、2002年3月に「貧困削減に関する行動計画」を発表した。
 本行動計画の中で、ノルウェーは、2015年までに世界の貧困を半分に削減するというMDGs達成のため、ODAの大幅な増額、具体的には2005年までに経済援助の対GNI比率を1%まで引き上げることを目標に掲げている。また、経済援助のみでは、貧困から抜け出すことは出来ないとの認識の下で、持続的な経済成長を達成するための多国間貿易システム及び債務救済策の向上、投資に関する法制度の確立、途上国産品の市場アクセスの向上等が必要であるとしている。さらに、貧困撲滅及び開発の前提として、平和と生命及び財産の安全が保障されていることが必要不可欠であり、このため紛争の解決及び予防に努力するとともに、紛争終結後の移行期における市民の利益保護、人権の促進にも引き続き尽力するとしている。
 また、途上国の経済成長を支援するための民間投資の促進、中でも途上国が必要とし、ノルウェーの得意分野でもある第一次産業分野、即ち農業開発及びエネルギー・インフラの整備に関する協力に加え、投資を呼び込む前提条件となる途上国のガバナンスの向上、即ち会計検査制度、オンブズマン制度、市民社会、政党、自由なメディアの育成等を優先的に実施することとしている。
 開発援助の実施に当たり、ノルウェーは、今後もプロジェクト援助は縮小し、セクター・プログラム及び財政援助の比率を高めていくとともに、途上国自身の開発及び貧困削減戦略に基づいて先進国及び国際機関の援助が行われるべきであるとの方針の下で、貧困戦略、教育、保健分野の向上、持続可能な環境及び資源管理等への支援を実施するとしている。2002年に実施された援助においては、特にHIV/AIDS、マラリア等の対策の支援に重点が置かれている。
 ノルウェーのODA予算は、2001年の123億ノルウェー・クローネ(NOK)、2002年の135億NOK、2003年の143億NOK(対GNI比0.93%)と拡大を続けている。2004年予算要求では、ODA予算は150億NOKと対前年比4.4%増、対GNI比0.94%であり、対GNI比ではデンマークを抜いて世界第1位となった。
 ノルウェーのODAは伝統的に国際機関、特に国連を通じた援助を重視しており、2002年の実績値で、二国間援助の総額は85億2,000万NOK、国際機関を通じた援助の総額は47億8,000万NOKとなっている。
 二国間援助の対象地域を見ると、2002年実績においても、アフリカ向けの支援が最大であり、全体の42%(前年37%)を占める。次いでアジア・大洋州地域20%、ヨーロッパ諸国14%、中東の8%となっている。2002年における主要援助対象国は、アフリカではマラウイ、タンザニア、モザンビーク、ウガンダ及びザンビア、アジア地域では、バングラデシュ、ネパール、の7か国となっている。

(2)実施体制
 ノルウェーにとって、対外援助は重要な外交政策となっており、国会が政策・予算の策定に大きく関与している。援助政策は外務大臣及び開発援助大臣と議会の協議を経て決定されるほか、対外援助予算も国別、地域別割当を国会が決議し、内容の変更には国会の承認が必要となっている。
 援助政策の立案、国際機関を通じた援助、緊急援助は外務省が行うが、現在の外務省はかつての開発協力省をその機構に取り込んでおり、外務大臣及び開発援助大臣の2大臣が一つの省内(外務省)に存在している。中心となる「国際開発政策局」は、援助対象国のみでなく援助実施地域という観点からも問題解決を図ること、及び、二国間援助と国際機関を通じた援助をリンクさせることにより、幅広い視点から開発援助政策を企画・立案を行う同局が全体の調整に当たる中で、地域担当の「地域局」及び国際機関を通じた援助担当の「国際関係局」が関係部局として開発援助に携わっている。外務本省における開発援助関係者は2002年末現在、183人である。
 一方、二国間援助については、これまでノルウェー開発協力庁(NORAD)が執行してきた。NORADは、人事・管理局、市民社会・民間セクター開発局、南部アフリカ局、中・東部アフリカ局、アジア局、ラテンアメリカ・中東・南東欧局の6つの部局で構成されており、2002年5月現在、本庁に251名を擁するほか、アフリカ、アジア等の19か国のノルウェー大使館に援助要員を合計100名派遣してきた。しかし、2003年9月、ノルウェー外務省は、開発援助政策のより効率的な実施の観点から大幅な組織改編を発表し、外務本省の開発援助にかかる政策立案機能強化を図るとともに、政策の執行権限をNORADから各国大使館へ移すことなどを決定した。本改革は2004年1月から実施されている。

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