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3 英国

(1)援助政策等
 英国は、途上国における貧困削減を援助の最終目標として掲げ、このために貿易、投資、債務、農業、環境等関連部分を統合した総合的見地からの途上国の開発支援を目指している。2002年1月には、持続可能な開発の促進及び人々の福祉改善を通じた貧困削減が開発の目的であることを明記した「国際開発法(The International Development Act)」が成立した。
 また、各省庁と大蔵省の間で取り決められた2005/06年度からの3年間における政策目標を提示した公共サービス協約において、国際開発省(Department for International Development)はMDGsの達成を中心に、以下の項目を挙げている。
[1]サブ・サハラ・アフリカ地域におけるMDGsに向けた進展(貧困削減、初等教育の普及、幼児死亡率の削減、安全な出産の普及、HIV/AIDS妊婦の削減、効果的な援助とアフリカ開発への国際的な政策を確保するためのパートナーシップの向上等)
[2]アジア地域におけるMDGsに向けた進展(貧困削減、初等教育の普及、幼児死亡率の削減、安全な出産の普及、HIV感染及び結核対策等)
[3]国際システムの効率化(欧州委員会の低所得向けのODAの割合増加、重債務貧困国に対する国際的な協力、MDGsに向けた国際的な協力、国連機関と人道支援システムの効率化等)
[4]EU及び世界の貿易障壁の削減
[5]特にアフリカ、アジア、バルカン、中東における紛争防止及び紛争後の復興への支援
[6]二国間援助のうち90%を低所得国向けとする
 2004年7月の包括的歳出見直しにおいて、1年あたりのODA総額を2007/08年度までに約65億ポンドとし、対GNI比についても0.47%に増加させることとした。更に2013年までにGNI比0.7%とすることを発表した。英国際開発省の援助予算に関しては、2004/05年度の約38億ポンドから2007/08年度には、約53億ポンドと大幅に増加させることとした。
 重点地域としては、アフリカ(コンゴ民主共和国、エチオピア、ガーナ、ケニア、レソト、マラウイ、モザンビーク、ナイジェリア、ルワンダ、シエラレオネ、南アフリカ、スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ)、アジア(アフガニスタン、バングラデシュ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、ネパール、パキスタン、ベトナム)の25か国をあげている。2002/03年度においては、サブ・サハラ・アフリカの人道危機、食糧危機に対する支援とアフガニスタン及びイラクへの援助を増加させた。なお、イラク復興支援については2003/04年度に2億4,800万ポンド、2005/06年度までの合計で5億4,400万ポンドの支援を表明した。
 2003年の英国の援助実績(DAC報告暫定値)は61億6,600ドルであり、対前年比11.9%の増加となっている。英国の援助は原則として無償であり、援助の条件は国際的に見ても緩やかなものとなっている。また、2001年4月より、英の二国間援助は100%アンタイドとなっており、OECD-DACにおけるアンタイドに関する議論の中でも主導的な立場をとっている。
 英国の援助における国際機関を通じた援助の比率は2002/03年度で43%と高く、中でもEUを通じた援助はDFID予算全体の27%を占めている。このため、英国はEUの援助及び国連等国際機関を通じた援助の効率的実施を重視し、国連機関の統廃合等にも積極的である。二国間援助においては個別のプロジェクトだけでなく途上国政府による貧困削減政策のためにバジェット・サポートを行うことに力を入れており、2007/08年度までにバジェット・サポートの二国間援助プログラムに占める割合を44%から53%まで増大させる予定である。また、1999年12月には重債務貧困国向け非ODA債権(19億ポンド)の100%放棄を発表するなど、途上国の債務放棄に関しても積極的である。なお、近年、日本との援助強調に積極的であり、2003年10月20日にはベトナムにおいてアジア地域援助効果ワークショップをベトナム、英国及び日本により共催した。

(2)実施体制
 英国の政府開発援助は、援助政策の立案から実施まで、閣内大臣を有するDFIDの責任の下に一元的に行われている。また、貿易、投資、債務、農業、環境等途上国の開発に関する政策の一貫性を確保すべく、他関係省庁との連携にも力を入れている。
 DFID職員は2002/03年度で1,925名、海外事務所は約30箇所となっている。DFIDでは海外事務所への権限委譲が進んでおり、200万ポンドまでの案件で政策的判断が必要とされない案件の発掘・形成は現地で行われている。
 なお、DFIDの関連組織として、英連邦開発公社(The Commonwealth Development Corporation)が途上国の民間部門に対するローン、株式投資の形態による支援を担当し、ブリテッシュ・カウンシル(The British Council)が人材育成分野での援助を実施しているほか、1997年3月に民営化された援助の資材・サービスの調達を実施するクラウン・エージェンツ(Crown Agents)等がある。また、英国には古い歴史と確固とした組織基盤を持つNGOが約130存在するが、英国政府はかかるNGOを災害援助、ボランティア派遣等の面で積極的に支援しており、2002/03年度では約2億2,300万ポンドの援助をNGO経由で行うなど重要な援助チャネルと位置づけている。

表

図

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