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4 フランス
(1)援助政策等
フランスは、その外交政策において開発援助重視の姿勢を明確に打ち出し、主要援助国としての地位を堅持している。1999年に発足した新開発援助体制(後述)も本格的に軌道に乗り、積極的な援助政策を志向している。
シラク大統領・ラファラン首相の現政権のもとでは、とりわけシラク大統領のイニシアティブに基づき、アフリカ重視の姿勢がとられている。2003年にフランスが議長国として開催したエビアン・サミットでは、アフリカ開発問題が中心的な位置付けを与えられた。また、同年11月には、カムドゥシュ・仏アフリカ首脳個人代表(前IMF専務理事)の提案に基づき、従来のG8・NEPAD会合を拡大し、国際機関及び他の援助国を含めた拡大パートナーによる対話の場として、アフリカ・パートナーシップ・フォーラム第1回会合がパリで開催された。
また、フランスは、エビアン・サミットにおいて、エイズ・結核・マラリア対策基金への拠出を3倍増(毎年1億5,000万ユーロを3年間)とする方針を発表し、同基金支援会合を同年7月にパリで開催するなど、エイズ対策における積極的な姿勢を鮮明に打ち出している。
さらに、河川の流域管理への支援もフランスの援助政策における重点事項として挙げられる。2004年4月にニジェール川流域機構首脳会談をパリで開催し、ニジェール川及びその支流の流れる9か国の首脳等、その他多数の国際機関や先進国の参加を得た。
ODAの実績については、2002年は総額54億8,600万ドル(DAC統計)であり、前年比で30.7%増額した。また、現政権は2007年にODAの対GNP比0.5%、2012年に0.7%を達成することを政府目標として公式に掲げており、実際にODAは着実に上昇傾向にある(2002年に0.38%、2003年に0.43%となる見込み)。フランスは伝統的に二国間援助を重視してきたが、近年はEUを初めとする国際機関を通じた開発協力にも取り組んでおり、二国間援助36億1,500万ドルに対して、国際機関を通じた援助は18億7,100万ドル(うち欧州委員会(EC)への拠出が12億8,600万ドル)となっている。
地域別に見ると、2001年から2002年の地域別二国間援助の57%はサブ・サハラ・アフリカに、18%が北アフリカに供与されており、アフリカ重視の姿勢が顕著である。このことは、フランスの援助政策において「優先連帯地域」(Zone de Solidarité Prioritaire)に指定されている54か国のうち、44か国がアフリカにあることとも関係している。なお、アフリカ以外では、中東(2.5%)及びインドシナ半島(タイ、ラオス、カンボジア)がフランスの重点地域とされている。
セクター別では、社会インフラ整備に対する支援の割合が最も大きく(33.5%)、中でも教育(19.5%)、医療(4%)、水供給・衛生(4%)等に対するフランスの関心の強さが現れている。同時に、マルチセクター(6.4%)、プログラム型(5.7%)、債務関連(33.7%)と、近年のマルチセクター貧困削減アプローチや債務削減の国際的課題を考慮した傾向も見られる。
(2)実施体制
1999年、前ジョスパン左派連立政権は、外務省と協力省の関係の見直しが急務であるとし、それまでの複雑な援助体制の効率化・透明化・一貫性を目指し、援助実施体制の改革を行った。これにより、協力省は外務省に吸収・統合され、外務省内部に国際協力・開発総局(DGCID)が設置された。DGCIDを総括する対外協力・仏語圏担当大臣は、外務大臣の下、対途上国のみならずフランスが重視する仏語・文化・科学等も含む広い意味での国際協力を担当することとなった。同時に、借款によるアフリカの経済インフラや民間投資参加等を主な業務としてきた経済・財政・産業省管轄のフランス開発公庫(CFD)は、近年のHIPC債務削減や貧困削減といった課題も考慮し、フランス開発庁(AFD:Agence française de développement)へと改編され、外務省と経済・財政・産業省の共同管轄の下、従来からの借款業務に加え、外務省予算の無償資金協力やプロジェクト運営も行う機関となった。
さらに、本改革に伴い、省庁間国際協力・開発委員会(CICID:Comité interministeriel de la coopération internationale et du développement)が創設され、省庁間にまたがる援助方針、国別・セクター戦略、従来の「プレ・キャレ(縄張り)」地域に限定しない優先連帯地域(ZSP)等を策定し、省庁間の調整・一貫性追求を任務としている。首相主催の下、関係閣僚により構成され、委員会事務局は外務省と経済・財政・産業省の両省に設置されている。
この他、企業、NGO、組合等の国際協力に関わる様々な関係者との協議の場として設置された国際協力高等評議会(HCCI:Haut conseil de la coopération internationale)は、広範にわたる議論のためのフォーラムとしての役割を果たしている。同評議会の主な目的は、民間・公的援助団体間の相互関係を改善し、政府と民間の共同作業を促進し、また国民の間に広く開発協力について理解を求めることである。


