本編 > 第II部 > 第2章 > 第5節 > 2.パキスタン
2.パキスタン
パキスタンは、近年テロとの闘いの前線国家となり、国際社会の平和と安定に重要な役割を果たしています。日本としても、パキスタンが民主的で穏健なイスラム国家として発展することは重要であるとの観点から支援を行っています。
1998年5月、パキスタンは、日本を含む国際社会の強い自制の呼びかけにもかかわらず、インドに引き続き、地下核実験を実施しました。これに対し、日本はパキスタン政府に強く抗議するとともに、核実験及び核兵器開発の中止、及び、核兵器不拡散条約(NPT:Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons)と包括的核実験禁止条約(CTBT:Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty)への早期加入を改めて強く申し入れました。また、日本は、ODA大綱の原則を踏まえ、新規の円借款並びに緊急・人道的性格の援助及び草の根無償資金協力を除く無償資金協力の停止等を内容とする経済措置を実施し、以降さまざまな対話の機会を捉えNPT加入、CTBT署名、批准を中心とする核不拡散上の具体的進展をパキスタン政府にねばり強く働きかけています。
2001年9月に発生した米国における同時多発テロに際し、パキスタンにアフガニスタン難民が流入する一方、治安の悪化等により経済状況の悪化が顕著化しました。これに対し日本は、47億円の緊急の経済支援を行うことを発表しました。また、同年10月には、核実験モラトリアム、輸出管理の強化といったこれまでのパキスタンの取組により日本の措置が相当の成果を上げたと考えられたこと、また、テロとの戦いにおけるパキスタンの安定と協力の必要性等を総合的に考慮し、経済措置を停止しました。
2004年2月、カーン博士による核関連技術流出問題に関し、パキスタン政府は、調査を行い、右事実を公表し、再発防止を約すとともに、政府の関与は否定しました。日本は、同問題に対し遺憾の意を伝えるとともに、情報提供及び具体的再発防止策を強く要請しました。これに対し、パキスタン政府は、日本との輸出管理に関する意見交換に応じるとともに、輸出管理強化法案を国会に上程するなど前向きな対応も示しています。日本は、これらパキスタン政府の対応を核拡散防止に厳格に取り組もうとする表れとして評価していますが、ODA大綱の観点から、パキスタン政府が国際社会の懸念に応え、日本を含めた国際社会に対し、不拡散体制の一層の強化に向け、適切な対応をとるよう求めています。
日本としては、今後とも、パキスタンに対してNPT加入、CTBT署名・批准を含む核不拡散上の進展を引き続きねばり強く求めていきますが、核軍縮・不拡散分野におけるパキスタンの状況が再び悪化するようなことがあれば、上記の経済措置の復活を含めしかるべき対応を検討することとしています。