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7.大洋州
日本の大洋州に対する2003年の二国間ODAは、約5,214万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は0.9%です。
日本にとって大洋州諸国は太平洋を共有する隣人であり、この地域の平和と繁栄は日本にとって極めて重要です。
第一次世界大戦後、日本の統治下にあった地域もありますが、これまで日系人の大統領を複数輩出するなど、大洋州は日本と歴史的に深いつながりがあり、良好な友好関係を保っています。また、国連など国際的な場においても大洋州各国は日本の重要な支持基盤です。さらに、これらの国々は広大な排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)を擁し、日本の遠洋漁業の重要な漁場を提供するとともに海上輸送の要衝でもあります。このような事情を踏まえ、日本は大洋州諸国を良きパートナーとして支援してきています。
大洋州は、比較的新しい独立国が多く、社会的経済的に自立した国家の構築が急務となっています。加えて小規模経済、一次産業依存型経済、国家の地理的拡散性、国際市場へのアクセス困難、自然災害への脆弱性、国土喪失の危機に直面しているなど島嶼国特有の共通問題を有しています。日本は、これらの事情とともに各国の個々の事情を考慮した援助を実施しています。
大洋州はメラネシア、ポリネシア、ミクロネシアの3地域(注)に大きく分けられ、それぞれの地域には民族伝統的社会のあり方、地質学的特質などに違いが見られます。
メラネシアには、国民所得など経済状況が悪く開発需要の大きい国が存在しています。その中でも、2003年5月に日本の人の派遣を伴う援助が約3年ぶりに再開された国であるソロモンは、長い内政の混乱を越え、今後国家復興を本格化させようとしています。2003年11月に開催されたドナー会合で、日本は紛争予防・平和構築、グッド・ガバナンス、インフラ等への今後の支援とソロモンの今後の復興に向けた努力への支持を表明しています。一方で、フィジーなど、太平洋における有数の観光地として知られ、また南太平洋大学(USP:University of the South Pacific)や太平洋諸島フォーラム(PIF:Pacific Islands Forum)など地域機関の本部を国内に持ち、人口・経済規模が大きく比較的開発が進んでいる国も存在しています。日本は、USPへの遠隔教育・情報通信技術強化のための協力や、観光振興のための専門家派遣などによってフィジーの経済的自立に向けた開発を支援しています。
図表II-36 大洋州における日本の援助実績

columnII-11 ソロモン諸島における有機農業振興プロジェクト
ミクロネシア地域は、第二次大戦の前は南洋群島として日本が国際連盟の委任統治を行い、第二次大戦後、国際連合の下、米国の信託統治を経て独立した国が多く、現在も米国からの支援に財政が依存する傾向が強く残っています。しかし、米国からの支援は期限が決められており、ミクロネシア各国の経済的自立達成のために日本に対する期待と役割は増大しています。また、ミクロネシア地域は珊瑚礁島や環礁島が多く地下資源に恵まれておらず、また国家が特に広範囲に拡散している国が多いため、経済開発は極めて困難であり、経済的自立達成には支援が今後も必要といえます。日本は、2003年度には、無償資金協力によりミクロネシアへポンペイ州周回道路整備計画などのインフラ整備やミクロネシア諸国の基幹産業の一つである漁業分野において水産流通に関する専門家派遣など、国家の基盤整備に関わる支援を行ってきています。
ポリネシアには、トンガやサモアのように火山島が比較的肥沃な土壌を形成し農作物に適している国土を持っている国々と珊瑚礁島で形成されているツバルやニュージーランドの自治領であるクック、ニウエの小島嶼国・地域があります。
日本は、大洋州諸国の首脳で構成される地域協力の枠組みであるPIFとの協力を進めてきました。1997年及び2000年の2回にわたり、日本・PIF諸国との首脳会議である太平洋・島サミットを開催し、2003年5月には、気候や海洋性などの点で大洋州諸国と共通の特徴をもつ沖縄において、第3回太平洋・島サミットを開催しました。この首脳会議では、これまでの大洋州諸国との協力に加え、2002年9月のWSSDにおける議論やその具体的取組に関する小泉構想を踏まえた「沖縄イニシアティブ」を採択しました。これは、日本と大洋州諸国が地域の開発について共に考え、共に取り組んでいくための指針と行動計画です。安全保障、貿易、保健、教育、環境という5つの重点分野について、それぞれが責任をもって取り組んでいます。
日本は、大洋州の地理的拡散性を考慮した効率的・効果的な支援として、国家の枠を超えた広域的協力による、環境保全や教育サービス提供のための支援を行っています。環境保全の支援では、地域機関である南太平洋地域環境計画(SPREP:South Pacific Regional Environment Programme)への支援として日本が建設したSPREP教育センターへの専門家派遣や廃棄物対策研修を行い、島嶼国を対象とした廃棄物対策ガイドラインの作成を実施することによって地域の環境問題解決に貢献しています。教育サービスの提供では、USPへの遠隔教育ネットワーク施設支援を通じて、島嶼国の人々へ広く高等教育を受ける機会を提供しています。