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(6)ODA以外の公的資金(OOF)及び民間部門との連携
 DAC統計で、世界全体の途上国への資金の流れを見ると、2002年にはODAが全資金流入量の39.1%(暫定値)を占めているのに対し、OOFや民間資金といったODA以外の資金は全体の約5分の3を占めています。このような資金の流れからもわかるように、途上国の開発のためには、ODAとODA以外の公的資金、民間資金との連携が重要です。
 経済社会インフラの整備に関しては、従来公的セクターが実施するものとして進められてきましたが、最近では民間部門の資金・技術やイニシアティブを活用したインフラ整備の取組がなされてきています。例えば、ベトナムのフーミー第3火力発電所プロジェクトには日本企業が民活方式で参加しており、このプロジェクトに対しJBICは他の銀行とともに協調融資を行い、NEXI、アジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)、多数国間投資保証機関(MIGA:Multilateral Investment Guarantee Agency)は保険を引き受けています。日本は1990年代以来ベトナムの発送電プロジェクトを円借款で支援してきました。しかし、2001年にベトナム政府が民間による電源開発の推進を決定し、それを受け、ADBや民間金融機関などと協調して、発送電プロジェクトに対する貸付を行いました。
 民間企業の途上国における事業展開には外貨交換や送金に対する規制があったり、法制度変更、戦争・内乱などといったリスクが伴ったりします。そのため、事業展開をするにあたって民間金融機関による融資を受けにくく、途上国への積極的な事業展開を図るのに困難な面があります。このような困難を取り除き途上国への事業展開を推進しやすくするために、JBICやADBのような公的機関は、民間金融機関と協調しつつ巨額の協調融資を可能にし、民間企業の途上国への事業展開を支援しています。

フーミー火力発電所:ベトナム (写真提供:国際協力銀行(JBIC))
フーミー火力発電所:ベトナム (写真提供:国際協力銀行(JBIC))

図表II-20 DAC諸国及び国際機関から途上国への資金の流れ

図表II-20 DAC諸国及び国際機関から途上国への資金の流れ


 このような、途上国へ流れるOOFの活用は、民間企業の海外事業展開を支援するとともに、融資の受入国では経済成長のためのインフラの整備を目的とすることもあります。特にBOT(Build, Operate and Transfer-scheme)方式(注)で実施されるプロジェクトは、プロジェクトの成果物が最終的に受入国のものとなり、その後の経済発展につながるインフラ整備の一端を担い、民間資金の流入を促す役割を果たすことになります。
 途上国の市場経済化の取組を支援する観点から、開発ニーズに応じ多様な資金調達が確保されることは極めて重要です。日本のODAとOOF、貿易保険などの公的資金供与、及び国際開発金融機関との連携・相互補完による資金供与はこのような観点から今後とも進められる必要があります。そのための取組として、2002年には官民有識者をメンバーとする「海外インフラ事業促進研究会」を立ち上げ、2003年度にはこの研究会の提言等を踏まえ、中国、フィリピン及びベトナムの電力セクターに関し、民間資金によるインフラ整備の推進、公的資金との連携について、より具体的な検討を行いました。また、OOFとの連携に関連した個別優良事業に対するフィージビリティ調査12件を実施しました。
 また、ODAにおける民間部門との連携を強化する動きも、進められています。例えば、JICAでは、途上国で実施している技術協力プロジェクトに対し、民間の活力、創意、ノウハウを生かすための「提案型技術協力」を実施しており、2003年度の実施実績としては、メキシコの初等教育の就学率向上を目的とした住民参加型の教育制度改善を図るための「南部地域における初等教育の普及」プロジェクト、ケニアにおける、日本のODAによって建設された施設を活用した、保健医療サービスの向上を支援する「西部地域保健医療サービス向上」プロジェクトなど計7件でした。JBICにおいても、円借款事業への国民参加を促進するとともに、途上国でも多様化する支援ニーズをきめ細かく捉えるため、2001年度より提案型、発掘型案件形成調査のスキームを導入しています。提案型は、日本国内の団体等からの提案に基づき、円借款事業に役立つ知見や情報の蓄積を図るものです。これに対し発掘型は、同じく提案に基づき、将来の具体的な案件を発掘・形成することが目的です。2003年度には提案型を6件、発掘型を8件実施しました。


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