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columnII-9 平和構築に貢献する円借款~スリランカ「農村経済開発復興計画」

 スリランカ北・東部では約20年に及んだ同国政府とタミル・イラーム解放の虎(LTTE)による国内紛争のため基礎インフラが毀損し、開発が大きく遅れていました。2002年2月の停戦合意後、スリランカ国民が「平和の配当」を実感することによって同国の和平プロセスを促進させるという観点から、日本としても、この北・東部地域の開発支援に積極的に取り組むことが必要であると考えていました。この一環で、2003年3月に日本は、「農村経済開発復興計画」を円借款で支援することをスリランカとの間で合意した。本計画は、北西部州、北中央州及び中央州の約6,500Km2の地域において、農村の生産性向上及び持続的開発の達成を目的として、灌漑施設の改善・補修、農民組織の強化等の農村開発のためのプログラムを行うものです。
 同計画への円借款の供与に先立ち、JBICは龍谷大学・立命館大学・コロンボ大学等の専門家と連携して開発政策事業支援調査(SADEP)「紛争と開発:JBICの役割」を行ないました。この調査の結果については、2002年12月にスリランカ政府関係者のみならず、紛争当事者であるLTTEの関係者の出席も得て、現地でワークショップが開催され、和平プロセスの主体であるとともに受益者でもあるスリランカの人々にフィードバックされました。同調査の提言等を受け、スリランカ政府は、もともと中・南部州を対象地域としてJBICと準備を進めていた「農村経済開発復興計画」において、将来の本格的な復興支援の展開に備えたパイロット地域として北・東部州を計画実施対象地域に加えたのです。
 スリランカの農村部における灌漑・生活用の溜池は、コミュニティの中心として象徴的な存在と言えますが、北・東部においては長年の紛争を通じこれら溜池は著しく損壊が進んでいました。北・東部地域から流出した難民の帰還・再定住には灌漑システム再建が不可欠との観点から、本計画では北・東部州において10か所の溜池の改修が予定されています。また、事業実施にあたっては、州政府が農民と土木工事の契約を結び、農民自らが工事に当たる「農民コントラクト」によって実施する参加型手法を用いることになっています。その他、計画実施終了後も農民組織が自らの手で溜池の改修や維持管理を行うことができるようトレーニングを行うこととしています。
 円借款の供与による事業は、数年かけて実施され、完成していくものですが、長期の資金供与を約束することにより、復興プロセスを安定的に支援できる長所があります。本スリランカ「農村経済開発復興計画」は、2003年度に本計画実施関係者間で合意書が結ばれ、スリランカ人自らの手によって現在着々と事業実施が進められています。

農村経済開発復興計画で修復される、長時間放置されたために干上がった潅漑用の溜池 (写真提供:国際協力銀行(JBIC))
農村経済開発復興計画で修復される、長時間放置されたために干上がった潅漑用の溜池 (写真提供:国際協力銀行(JBIC))

マハベリ開発計画C地域における事業の様子 (写真提供:国際協力銀行(JBIC))
マハベリ開発計画C地域における事業の様子 (写真提供:国際協力銀行(JBIC))


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