columnII-8 アフガニスタン女性の地位向上を目指して
アフガニスタンでは、人口の約7割が1日の収入2ドル未満という最貧困での生活をしています。特に、長年就学や就業の機会を奪われていた女性達は、いくつかの統計が示すとおりとても厳しい状況下で暮らしています。例えば女性の非識字率は9割と高く、女子の就学率は3割にとどまり、妊産婦死亡率は世界で2番目に高く、約30分に1人の女性が妊娠・出産に関係した原因から死亡しています。また、法律に定められる女性の権利擁護、男女平等の保障には実体が追いついておらず、強制結婚や幼児結婚、強制結婚に絶望しての焼身自殺、家庭内暴力等も問題になっています。
このような中、アフガニスタン政府は、ジェンダー平等に向けて、様々な取組を行っています。2001年には女性課題省を設置し、ジェンダー主流化(様々な施策にジェンダーの視点を取り入れることを指します。)に向けての各種政策の立案を行っているほか、2004年1月に採択された新憲法では、男女平等、女性の政治参加の権利の保障、高等教育レベルまでの女性参加の保障が盛り込まれました。また、アフガニスタンは、男女平等を推進するための包括的な国際合意である女子差別撤廃条約を2003年に無条件で批准しました。
このようなアフガニスタンの取組を支えるため、日本は、「女性の地位向上」を対アフガニスタン支援の優先課題と位置づけ様々な支援を行ってきています。ジェンダー平等に向け取り組んでいる女性課題省に対しては、2002年からこれまで8名の専門家を派遣し、新しく設置されたばかりの同省の機構や年間計画策定といった組織づくりから、大臣を補佐して予算・方針作成まで行い、政策レベルでジェンダー主流化に取り組めるような体制整備・能力向上を支援してきました。また、人口の大半が住む農村地域においてもジェンダー主流化が実施されるよう、女性課題省の地方局整備も支援しています。
先に述べた新憲法起草の段階では、日本は、新憲法を起草している委員会に対し専門家を派遣し、法律による女性擁護の観点からの助言も行っています。その憲法に基づき実施が予定されている選挙に向けた有権者登録についても日本は国際機関を通じた支援を行っています。なお、有権者登録の過程では、女性の政治参加を確保できるよう、女性による有権者登録、女性が登録所により行きやすくなるような環境の整備とともに、これまで政治から疎外されてきた女性たちに対し、そもそも「有権者登録」、「選挙」とは何かということを説明する等、女性に対する政治参加への理解を深め、参加の可能性の拡大が図られました。そのため、有権者登録を行った国民のうち女性の割合が4割にも上るなど、アフガニスタンにおいては画期的なレベルに達しています。
その他にも日本は、保健分野では妊産婦死亡率を減らすため助産婦の研修、草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて、女生徒でも通学しやすい場所における学校建設、いまだに就業の機会が限られている女性の経済的自立を図るため、女性による石鹸工場への支援、女性に対する縫製技術や識字教育に対する支援を実施する等、日本は政策・プロジェクトの両レベルにおいてアフガニスタンのジェンダー平等に向けた取組を支援しています。

女子への識字教育。カリンダ学校

女性に対する縫製技術の支援の様子。JEN絨毯センター