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columnI-18 アンコール遺跡の救済

 アンコール遺跡は、カンボジアの伝統文化と国民統合の象徴であると同時に、アジアの至宝とも言うべき重要な文化遺産ですが、同遺跡は、カンボジア和平成立後の1992年、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界遺産」に認定されると同時に、「危機にあらされている世界遺産リスト」にも登録されました。世界各地には、十分な保護措置が行われないまま、崩壊の危機に瀕している考古遺跡や歴史的建造物などが数多くあります。これらの文化遺産は、その国の国民だけではなく、人類共通の貴重な財産であり、それらを後世にきちんと伝え残していくことは、今を生きる我々の責務です。
 この分野での国際貢献を果たすため、日本は、カンボジアの復興支援の一環として、アンコール遺跡の救済支援を決定し、1993年10月、「アンコール遺跡救済国際会議」を東京で開催しました。また、翌1994年には「日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA)」を結成し、ユネスコ文化遺産保存日本信託基金注)を通じ、これまでに延べ680人以上の日本人専門家を現地に派遣し保存・修復活動を行っています。日本は、「カンボジア人自身の手による保存・修復の実現」を目指しており、カンボジア人専門家と共に現場での保存・修復活動に取り組むことを通じて彼らへの技術移転にも力を注いでいます。この10年間で今後を担う人材が着実に育ってきています。
 アンコール遺跡は、このような日本をはじめとする国際社会からの支援の結果、2004年7月の第28回世界遺産委員会において「危機にさらされている世界遺産リスト」からの除外が決定されました。このカンボジアにおける実績は、アフガニスタンやイラクなどが現在直面している紛争後の文化遺産保護という課題の解決の成功例として高く評価されています。

注:1989年8月に世界の文化遺産保存のために日本がユネスコに設立した基金。これまで同基金を通じて、バーミヤン遺跡(アフガニスタン)など、24か国において計30件の保存・修復プロジェクトに協力を実施。

修復工事中のアンコール・ワット最外周壁内北経蔵 (写真提供:JSA
修復工事中のアンコール・ワット最外周壁内北経蔵 (写真提供:JSA)

修復工事の様子 (写真提供:JSA)
修復工事の様子 (写真提供:JSA)


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