前頁前頁  次頁次頁


columnI-13 OECD-DAC援助審査を通じて見る50年

 OECDの開発援助委員会(以下OECD-DAC)では、メンバー国が相互の援助政策を審査しあう援助審査(ピア・レビュー)という仕組みがあります。これは、単に審査される国の援助政策の向上を図るのみならず、相互理解(mutual learning)を促進し、ドナー・コミュニティ全体の援助の向上に役立てることも目的としています。
 日本は本年ODA50周年を迎えましたが、これまでの歴史を振り返り、今後を展望するにあたっては、日本の視点のみならず、国際社会から日本のODAがどのように受けとめられてきたかについて振り返ることも重要です。こうした観点から、過去25回の対日援助審査の報告書は最適の材料を提供しています。
 全体を通してうかがえるのは、日本のODA政策に対する関心の高さです。実際、各対日援助審査会合において用意される質問リストは、他の国に対する審査会合と比べて多岐にわたる場合が多数でした。日本のODAが次第に拡大し、世界のトップ・ドナーとなっていく中で、日本がどのような考え方に基づいて、どの地域、分野に援助を展開させていこうとしているのかについて各国が高い関心を持ったことは容易に想像できます。
 具体的に中身を見てみると、ほぼ全ての報告に共通しているのは、日本のODA増加を歓迎し、更なる増額を慫慂している点です。これは日本が経済発展に伴ってODAを急速に増大させていった1960年代から1990年代についてもそうですし、また現在についても同様です。また、1960年代から1980年代には、より譲許性の高い援助の実施(1960年代から1980年代当時、日本が供与したローンの条件(利率・償還期間等)は他国に比べてまだ厳しいものとなっていました)やローンのアンタイド化に向けた努力を求められたこと、また、アジア以外の地域へのODA供与に関する考え方の明確化を求められたことも、日本に対する援助審査報告書の1つの特徴です。こうしたことも、日本の援助規模が大きくなるにつれてその影響力が地域を越えたグローバルなものになっていったことの裏返しといえるかもしれません。
 こうした課題を克服しつつ、1990年代に入って世界のトップ・ドナーとなって以降は、日本側から自らの考え方を発信しようという姿勢が報告書の記述からもうかがえるようになりました。それは具体的には1992年のODA大綱の発表、従来からの日本の援助の基本理念であるオーナーシップ(自助努力)とパートナーシップの概念を明確に謳った「DAC新開発戦略」策定に際しての積極的なイニシアティブ発揮等に表れています。2003年に行われた最近の対日援助審査でも、日本から新ODA大綱の内容等について積極的な発信を行い、近年にない中身のある援助審査であったと好評を博しました。
 このように、援助審査を通じて、各国から単に日本の援助に対する意見をもらうだけでなく、日本からも積極的に自らの考え方を発信することによって、真の意味での相互理解が進みつつあります。こうした相互理解を通じて、日本のODAに対する世界の期待は大きくなっており、日本の動向は、OECD-DACにとっても引き続き大きな関心の的となっています。


前頁前頁  次頁次頁