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columnI-5 IDEAなどにおけるアジアの経験の世界への発信の努力

 東アジア開発イニシアティブ(IDEA)は、2002年1月に小泉総理がシンガポールで行った対ASEAN政策演説で表明した「共に歩み共に進む」という考え方を開発分野で具現化するものです。IDEAは、東アジア地域の経済連携と地域協力の促進を推進力として、同地域の開発課題についての認識を共有するとともに、今後の地域開発協力の向かうべき方向性を模索することを目的としています。また、東アジアの開発モデルを世界に発信することも意図しています。
 2002年8月、ASEAN、日本、中国及び韓国の外務大臣及び開発大臣が参加した閣僚会合が東京で開催されました。そこでは、各国から日本のODAに対する感謝の意が示されるとともに、主に、以下5点について確認がなされました。即ち、[1]開発においては自助努力が重要であり、開発の主体となる人材育成や政府の能力開発が鍵となること、[2]地域の発展に向けてODAのみならず貿易と投資、さらには金融とも連携した成長志向の包括的な開発が重要であり、民間資金と連携した戦略的なODAの活用が期待されること、[3]社会的弱者への配慮や平和や安定のためにも効果的な開発のための環境整備(具体的には、良い統治の確保、制度・インフラ整備、紛争予防)に取り組むことが地域共通の課題であること、[4]地域内の各国の発展段階は異なるが、各国が有する能力に応じて協力していくことが有効であること、[5]ODAによる経済インフラ整備が貿易や投資の呼び水となったことなどを考えれば、政府間協力と表裏一体で官民連携を促進することが有効であることなどです。
 この閣僚会合のフォローアップとして、日本は、東アジアの経験をアジア以外の他の地域と共有すべく、2002年8月26日から9月4日にかけて南アフリカのヨハネスブルクで開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)の機会にIDEAの内容を紹介するサイド・イベントを開催しました。また、2003年8月には、東アジアの経験を学術的な観点から掘り下げることを目指して、ASEAN+3、アフリカ(ガーナ)等の有識者などの参加を得て、IDEA福岡シンポジウムを開催しました。ここでは、東アジア開発モデルの多様性、国内経済・社会改革や東アジア地域協力の拡充の重要性、アジアの経験のアフリカでの活用といった課題について個人の資格で活発な議論がなされました。参加者からは、民間投資の誘致、開発における政府の役割、そしてインフラ・制度・人材育成の重要性が改めて指摘されました。こうした議論の内容はアジア・アフリカ協力推進の観点から、2003年9月末に東京で開催された第3回アフリカ開発会議(TICADIII)の場でも紹介され、アフリカ諸国の指導者に伝えられました。日本は、今後とも、様々な機会を通じアジアの開発の経験と成果を世界に発信していく考えです。

東アジア開発イニシアティブ(IDEA)閣僚会合の様子
東アジア開発イニシアティブ(IDEA)閣僚会合の様子


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