前頁前頁  次頁次頁


columnI-3 世界の貿易を支える海の大動脈~スエズ運河第1期拡張計画

 ヨーロッパとアジアを結ぶ海上交通の要衝、スエズ運河。世界の海上貿易量の7%が同運河を利用しており、年間通航船舶数は1万5千隻を超えます。
 日本政府がスエズ運河に対する技術協力を開始したのは1960年で、特に第3次中東戦争によって運河が閉鎖され1975年に再開されて以降、本格的にハード、ソフト両面にわたる協力を行ってきました。
 1975年から1980年にかけて行われたスエズ運河第1期拡張計画(以下、本計画)は、総工費約13億ドル(うち日本をはじめ世銀、サウジアラビア、クウェートなどから外貨分7.6億ドル)。これにより航路幅は89mから160mへ、水深は14.5mから19.5mへと拡張され、通航可能船舶は6万トンから15万トンへと向上しました。日本政府は有償資金協力で、このプロジェクトに対し、浚渫船の購入(120億円)を支援したほか、本計画へ2.6億ドル(610億円)の資金供与を行いました。
 本計画における浚渫工事については、日本企業が全外注分の約7割を請け負い、日本の優れた海上土木技術により固い岩盤の掘削という難工事を克服しました。なお、現在では、スエズ運河庁が浚渫船を所有しており、自ら浚渫を行うことが可能となっています。
 技術協力に関しては、日本は1978年から1989年にかけて、経営管理や通航料金政策に関する分析・評価を行う「エコノミック・ユニット」を運河庁内に設立させ、研修員の受け入れ、専門家派遣などの支援を行うとともに、運河庁の研究機関に対し、1978年以降専門家を派遣し、技術系職員の指導を行ってきました。
 スエズ運河の通航料収入は、年間26億ドル(2003年)と、エジプトにとって観光収入、海外労働者送金、石油輸出と並ぶ重要な外貨収入源となっています。このように世界経済・貿易にとっても、エジプト経済にとっても重要なスエズ運河の拡張プロジェクトについて、当時の故サダト大統領は日本の援助を高く評価し、これを機にこれまで欧米志向であったエジプトにおける日本の地位は向上し、両国間の友好親善に大きく寄与しました。

作業に使うカッターヘッドの修理の様子
作業に使うカッターヘッドの修理の様子

岩盤撤去作業
岩盤撤去作業

スエズ運河を航行する船舶
スエズ運河を航行する船舶


前頁前頁  次頁次頁