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4 フランス

(1)援助政策等
 フランスは、その外交政策において開発援助重視の姿勢を明確に打ち出し、主要援助国としての地位を堅持している。1999年に発足した新開発援助体制(後述)も本格的に軌道に乗り、積極的な援助政策を志向しつつある。具体的には、2002年の一連の選挙の結果誕生したシラク大統領・ラファラン首相の保守・中道政権は、2012年にODAの対GNP比0.7%達成、及び2007年にODAの50%増額を政府目標として公式に掲げ、実際ODAは着実に上昇傾向にある。
 フランスの開発援助の1つの特徴として、「優先連帯地域」(ZSP:Zone de Solidarite prioritaire)とそれ以外の地域を区別する政策を採用していることが挙げられる。優先連帯地域は、1999年の改革の際に導入された概念で、主に資本市場での資金調達が困難な最貧国を中心に構成され、二国間援助の主な対象となる。その他の地域においては、フランスの政治・経済・科学・技術・文化的プレゼンスの維持を主な目的として、開発援助を実施している。
 ODA実績については、2002年は総額54億8,600万ドル(DAC統計ベース)であり、対前年比で30.7%増加した。地域別に見ると、植民地時代からの歴史的つながりもあり、フランスは、自国の商業・経済利益と政治ネットワークが複雑に絡んでいる仏語圏アフリカ諸国に対する援助を重視する傾向にあるが、近年、特にナイジェリア、アンゴラ、南アフリカ、アラブ圏等の経済・石油大国を中心に、フランス語圏以外のアフリカ・中東へのプレゼンス強化も図っている。DAC報告書によれば、2000~2001年の地域別二国間援助の47.1%はサブサハラ・アフリカ(1990~91年には57.4%)と、サブサハラ・アフリカに重点を置いてきた根本的姿勢は変わっていない。その他の地域においては、中東及び北アフリカ23.5%(13%)、南・中央アジア6.6%(5%)、その他アジア・オセアニア9.7%(18%)、欧州6.6%(1.4%)、南米及びカリブ6.5%(5.2%)と、特にアラブ圏への進出が目立っている。
 フランスは、伝統的に二国間援助を重視しているが、最近ではEUをはじめとする国際機関を通じた開発協力にも取り組んでいる。DAC報告書によれば、2001年には、フランスは国際機関に対しODAとして16億2百万ドルを拠出しており、65.1%を欧州委員会(うち24.7%を欧州開発基金(=主にアフリカ))に充てている。その他の国際機関を通じた援助の予算は、14.5%を世界銀行グループ(IDAのみ)、6.9%を地域開銀(4.9%アフリカ開銀、1.9%アジア開銀、0.1%米州開銀)、6.8%を国連機関(0.9%UNDP、0.1%WFP、0.4%UNICEF、0.5%UNHCR)、6.9%をその他(4.5%IMF、0.4%IFAD)に割り振っており、ここでもやはりアフリカを考慮した内訳となっている。
 なお、セクター別では、水、教育、保健医療・エイズ、農業・農村開発、インフラ整備が優先セクターとして位置付けられている。DAC報告書によれば、教育が二国間援助の24%を占めており、農業7.5%、運輸・通信4.8%、保健医療4.7%、水・衛生2.9%と続く。同時に、マルチセクター9.9%、プログラム型3.8%、債務関連24.3%と、近年のマルチセクター貧困削減アプローチや債務削減の国際的課題を考慮した傾向も見られる。

(2)実施体制
 1999年、前ジョスパン左派連立政権は、外務省と協力省の関係の見直しが急務であるとし、それまでの複雑な援助体制の効率化・透明化・一貫性を目指し、援助実施体制の改革を行った。これにより、協力省は外務省に吸収・統合され、外務省内部に国際協力・開発総局(DGCID)が設置された。DGCIDを総括する対外協力・仏語圏担当大臣は、外務大臣の下、対途上国のみならずフランスが重視する仏語・文化・科学等も含む広い意味での国際協力を担当することとなった。同時に、借款によるアフリカの経済インフラや民間投資参加等を主な業務としてきた経済・財政・産業省管轄のフランス開発公庫(CFD)は、近年のHIPC債務削減や貧困削減といった課題も考慮し、フランス開発庁(AFD:Agence francaise de developpement)へと改編され、外務省と経済・財政・産業省の共同管轄の下、従来からの借款業務に加え、外務省予算の無償資金協力やプロジェクト運営も行う機関となった。
 さらに、本改革に伴い、省庁間国際協力・開発委員会(CICID:Comite interministeriel de la cooperation internationale et du developpement)が創設され、省庁間にまたがる援助方針、国別・セクター戦略、従来の「プレ・キャレ(縄張り)」地域に限定しない優先連帯地域(ZSP)等を策定し、省庁間の調整・一貫性追求を任務としている。首相主催の下、関係閣僚により構成され、委員会事務局は外務省と経済・財政・産業省の両省に設置されている。
 この他、企業、NGO、組合等の国際協力に関わる様々な関係者との協議の場として設置された国際協力高等評議会(HCCI:Haut conseil de la cooperation internationale)は、広範にわたる議論のためのフォーラムとしての役割を果たしている。同評議会の主な目的は、民間・公的援助団体間の相互関係を改善し、政府と民間の共同作業を促進し、また国民の間に広く開発協力について理解を求めることである。

(1)ODA上位10か国


(2)地域別割合の推移(外務省分類)


(3)分野別割合の推移



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