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5 イタリア
(1)援助政策等
イタリアは、1995年、経済企画閣僚会議が新経済開発協力指針を策定し、以後同指針に従い開発援助を実施している。同指針は、国際社会との協調を前面に掲げ、政治、経済、人道的な側面から、[1]先進国による対最貧国援助努力への参加確保、[2]イタリアの安全保障に直接影響しうる開発途上国の安定強化、[3]地球規模問題解決への貢献、[4]貧困撲滅への国際的努力への貢献、[5]経済改革、特に、市場経済化、経済の自由化努力支援、[6]国際社会による人道支援への参加、を政策目標としている。また、同指針は、今後国際社会と一体となって取り組むべき課題として、国際的環境保護、世界的人口問題、麻薬・組織犯罪、基礎教育、性差別問題、感染症対策等を掲げ、さらに、その具体的援助政策として、緊急援助、食糧援助、人材育成、民間企業支援、人権保護・民主化支援、政治・行政・経済改革のための技術協力、職業訓練、途上国内文化遺産保護、途上国内天然資源保全、経常収支改善のための商品援助・債務救済、市場経済化インフラ整備等を挙げている。
近年のイタリア政府の最大のプライオリティーは、貧困削減に置かれており、食糧安全保障、教育、環境保護等の分野を通じて、途上国自らが開発計画を策定する努力に対する支援を強化している。さらに、重債務貧困国の債務削減措置の迅速な実施を重視して、ジェノバ・サミットの成果を踏まえて債務削減措置を実施しており、アフリカ諸国を中心に債務帳消しに関する協定を締結し、2003年11月時点で総額15.7億ユーロの債務の帳消しを行っている。債権放棄の条件として、当該国が人権、基本的自由の尊重、紛争解決手段としての戦争の放棄、貧困対策としての社会福祉・人材育成対策を行っているかについて審査している。また、途上国の行政サービス向上及び良い統治に果たす電子政府の役割に注目し、一部途上国と電子政府の具体的プロジェクトを実施するためのパートナーシップ構築を策定している。
援助規模は、2002年は23.13億ドル(DAC統計ベース)で、ODAの対GNI比は0.20%であり、二国間援助が43%、国際機関を通じた援助が57%で、国際機関を通じた援助の比重が高いことが特徴である。地域的配分については、アフリカの角及びサハラ以南地域、南東欧地域、中東地域を重点地域としている。一方、中南米、アジアについては、予算執行状況等を勘案しつつ選別的な援助を行うとしている。発展段階別(2000年)では、LDC及びその他の低所得国諸国60%、低中所得国(LMIC)諸国30%、高中所得国(UMIC)諸国10%で、低所得国への配分が高い比率を占めている。
(2)実施体制
イタリアの政府開発援助は、1987年に成立したODA基本法(1987年法律第49号)の下で実施されており、二国間援助(有償、無償・技協、食糧援助、文化・教育関係)及び国連関係機関に対する拠出については、外務省開発協力総局が一元的に管理・実施し、世界銀行等国際金融機関に対する拠出については、経済・財政省が管轄している。また、有償資金協力については、外務省からの指示を受けて中期信用金庫(Mediocredito Centrale)が借款協定の締結、貸付実行・回収業務を行っている。中期信用金庫はさらに、途上国におけるイタリア・現地企業合併事業に対する資金援助も行っている。
外務省開発協力総局は14課から構成され、2002年末時点での職員数は480名であり、局内には中央技術ユニットと呼ばれる63名の経済協力専門家集団を擁する。案件の発掘等は在外公館を中心になされており、1998年には20か国における在外公館内にODA関連の海外事務所が設立され、効率的な案件の実施や当該国に対する開発戦略の策定に取り組んでいる。
(1)ODA上位10か国

(2)地域別割合の推移(外務省分類)

(3)分野別割合の推移
