囲みII-4 ミレニアム開発目標(MDGs)の達成の見通し等についての国際社会における見方
1.国連 : 「ミレニアム宣言の実施に関する事務総長報告」(2003年9月)
MDGsの達成については、現在のところ、地域間・国家間などで進展に大きな差があり、このままでは2015年までに目標が達成できないおそれのある地域がある。しかしながら、今後、国際社会が努力を強化すれば、世界全体で達成することも可能であり、ほぼ全ての国レベルにおいてもこれを達成するという可能性は、まだ残っている。
貧困人口半減を達成する可能性もまだ残っている。飢餓人口半減は地域により困難な状況にあるので、何らかの方策を講じなければならない。初等教育の目標についてはサブサハラアフリカを除き達成されつつある。ジェンダーの目標については概ね正しい方向に進んでいる。乳幼児死亡率削減、妊産婦死亡率削減は憂慮すべき状況であり、何らかの方策が必要。エイズ等疾病蔓延防止についても憂慮すべき状況だが目標達成の希望はある。環境の持続可能性の確保については成功と失敗が錯綜しており、注意を要する。
MDGsの達成は、貿易、債務救済や援助などの、「開発のためのグローバル・パートナーシップの推進」の目標に関する義務を先進国が果たすか否かにかかっている。債務救済については進展が見られるものの、貿易と金融・開発援助の分野においては、更に一層の努力が必要。
2.UNDP : 人間開発報告書2003年版
世界全体で、1990年代と同様の速度でしか進展が見られない場合、貧困人口削減の目標と、安全な飲料水に関する目標の達成のみが現実的な見通し。これは主に中国とインドでの成果による。
地域別に見ると、東アジア・大洋州は他の目標についても著しい進展が見られ、アラブ諸国、ラテンアメリカ・カリブ地域においては2015年までの達成は簡単ではないが可能な状態である。しかし、他の地域においては、MDGsの達成は非常に困難な状況である。例えば、現在の進展状況ではサハラ以南のアフリカでは、貧困人口削減の目標が達成されるのは2147年、乳幼児死亡率の目標の達成については2165年の見込みである。
3.世界銀行 : 世界開発報告2004年版
世界全体では貧困人口比率削減目標を達成する見込みであるが、教育、ジェンダーと幼児死亡率については、達成は困難な状況である。今後予測される一人あたりGDPの成長率が達成されれば、アフリカ以外の地域については貧困人口に関する目標を達成できる見込み。しかし、東アジアとヨーロッパ・中央アジア以外の地域では、経済成長のみでは初等教育や幼児死亡率の目標等を達成するのは困難。アフリカ地域においては、2倍の経済成長率が達成出来ても、貧困に関する目標は達成できるが、保健・医療と教育に関する目標は達成できない。