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囲みI-2 「人間の安全保障委員会」の報告書の発表

「人間の安全保障委員会」報告書の発表

 1.「人間の安全保障委員会」報告書は、2003年5月1日、ニューヨークにおいて、緒方貞子、アマルティア・セン両共同議長によりコフィ・アナン国連事務総長へ提出された。

 2.最終報告書は、グローバル化が進んだ今日の世界においては、国家が人々の安全を十分に担保できていないケースがあるとの現実を踏まえ、紛争と開発の両面にかかわる現象に対し、包括的な取組を提唱している。具体的には、個人やコミュニティに焦点をあて、人間一人一人の保護とエンパワーメント(能力強化)の必要性を強調している。

 3.報告書に掲載されている主な提言
  (1)暴力を伴う紛争下にある人々を保護すること
  (2)武器の拡散から人々を保護すること
  (3)移動する人々の安全確保を進めること
  (4)紛争後の状況下で人間の安全保障移行基金を設立すること
  (5)極貧下の人々が恩恵を受けられるよう公正な貿易と市場を支援すること
  (6)普遍的な生活最低限度基準を実現するための努力を行うこと
  (7)基礎保健サービスの完全普及実現により高い優先度を与えること
  (8)特許権に関する効率的かつ衡平な国際システムを構築すること(注)
  (9)基礎教育の完全普及により全ての人々の能力を強化すること
  (10)個人がアイデンティティを有し多様な集団に属する自由を尊重すると同時に、この地球に生きる人間としてのアイデンティティの必要性を明確にすること

 (参考)
 1.人間の安全保障委員会は、2001年1月に日本とアナン国連事務総長のイニシアティブにより緒方貞子前国連難民高等弁務官及びアマルティア・セン・ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ学長(ノーベル経済学賞受賞者)を共同議長として創設された。同委員会は、2003年2月に最終会合を開催し、報告書に合意した。

 2.人間の安全保障委員会報告書については、2月26日に緒方貞子、アマルティア・セン両共同議長より小泉純一郎総理大臣に報告され、5月1日には両共同議長よりアナン国連事務総長に提出された。また、11月27日には日本語版が緒方共同議長より小泉総理に手渡された。

 注:医薬品製造能力が不十分な途上国において、国外で特許権が設定されている医薬品が適切な形で手に入るような制度的枠組みを求めるもの。WTOにおける議論において、2003年8月に決着を見た。


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