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(3)開発における女性支援(WID)/ジェンダー
世界の貧困層の約7割が女性であり(注1)、様々な面で多くの女性が脆弱な立場に置かれています。また、均衡のとれた持続的な開発を実現していくため、男女の均等な開発への参加とそこからの受益を図る必要があることから、開発における女性支援及びジェンダーへの配慮は重要です。
日本は、1995年に発表した「途上国の女性支援(WID)イニシアティブ」に基づいて、開発援助の実施にあたって、女性の一生のすべての段階を通じて、女性の地位向上と男女格差の是正に配慮し、女性の教育、健康、経済・社会活動への参加といった分野を中心とした支援を積極的に行っています。開発における女性支援に関連した事業は、専門家派遣及び研修員受入等による支援やNGOを通じた小規模で地域に根ざした支援が多く、2002年度の実績は、技術協力では全体の経費の約11%、草の根・人間の安全保障無償では全体の約25%を占めています。また、近年の開発におけるジェンダーへの配慮をより重視する傾向の中で、開発における女性支援のみではなく、すべてのODA事業が男女共同参画の視点を含む社会面により一層配慮されるよう取り組んでいきます。
主な取組としては、2002年1月のアフガニスタン復興支援国際会議にて日本が発表した復興支援策において、重点分野の1つに「女性の地位向上及び国づくりへの参画」を掲げ、紛争後の和平プロセスへの女性の参画を重視していることが挙げられます。アフガニスタンは、タリバン時代の政策により女性の自由が大きく制限されてきたことや、長年の戦乱により、難民や国内避難民が生まれ、さらには戦乱により多数の男性が死亡したことによる寡婦や孤児、社会の高齢化など、女性の生活が極めて困難な状況に置かれていることからも、女性が復興に果たす役割は非常に大きいとされています。日本は、2002年2月から、福田内閣官房長官の主催により「アフガニスタンの女性支援に関する懇談会」を開催し、5月には、今後日本が女性支援を進めていくにあたっての基本的考え方、支援策の方向性及び具体的支援策等を盛り込んだ提言「アフガニスタンの女性支援策について」をとりまとめました。この提言も踏まえながら、日本は、アフガニスタンにおける女性支援へ積極的に取り組んでおり、具体的には、アフガニスタン女性課題省に対するジェンダーの専門家の派遣や同省からの研修員受入、女子校の修復、NGOを通じた多目的女性センターの建設、人間の安全保障基金を通じた難民・避難民女性への支援(職業技能訓練、各種セミナー、所得創出事業)など多数行っています。
1991年、長年の内戦に終止符が打たれたカンボジアでも女性支援のための協力を積極的に行っており、1996年以降、複数回にわたり、カンボジア政府の婦人・退役軍人省に対して専門家を派遣しています。今後も、カンボジア国内外の正確なジェンダー情報、統計分析に基づく、婦人・退役軍人省によるジェンダー関連の政策が立案され、地方女性局も含めて右政策が有効に実施されるため、専門家の継続的な派遣や機材の供与を行っていきます(注2)。
また、日本の援助により途上国のオーナーシップの向上につながった1つの具体的な事例を紹介すれば、日本はインドネシア政府に対して1999年よりWID及びジェンダー主流化に関する政策提言を行う専門家を派遣し、その活動の一環としてジェンダー統計整備の協力を行いました。その結果、JICAと女性のエンパワーメント省自身が州別ジェンダー統計プロファイル(注3)を分担して約30州分を作成し、1州あたり500冊から1,000冊を配布しました。また、1州あたり80人から100人が参加したジェンダー統計に関するセミナーを12の州で開催し、参加合計人数は1,000人を超えました。女性のエンパワーメント省では、ジェンダー統計の重要性を認識し、JICA支援の後、予算を割り当てて人員配置も行い、独自にジェンダー統計プロファイルを出版しています。また、独自でジェンダー統計を出版した県も出てきています。
図表III-8 WID分野における援助実績

この他、2002年度には、外部有識者の協力を得て「開発における女性支援(WID)/ジェンダー政策評価-WIDイニシアティブの評価」を実施しました。この評価報告書においては、これまでのWIDイニシアティブにおける取組について、成果と課題を抽出し、今後のWID/ジェンダー政策のよりよい企画立案と実施に向けた提言が示されています。日本政府としては、今後とも男女共同参画の視点を重視し、公平で効果的な経済協力を目指すとともに、女性の地位向上に一層取り組んでいく考えです。