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第3節 援助政策の立案及び実施等
新しいODA大綱においては、これまでのODA改革の成果を踏まえ、援助政策の立案及び実施体制を明確に示すため、標題の大項目を設けました。これにより、政府全体としての一体性と一貫性のあるODAの実施を確保するとともに、内外の援助関係者との連携や国民参加の拡大等により幅広い支持が得られるような効果的なODAを実施していく考えです。
1.援助政策の立案及び実施体制
(1) 一貫性のある援助政策の立案
(2) 関係府省間の連携
(3) 政府と実施機関の連携
(4) 政策協議の強化
(5) 現地機能の強化
(6) 内外の援助関係者との連携
2.国民参加の拡大
(1) 国民各層の広範な参加
(2) 人材育成と開発研究
(3) 開発教育
(4) 情報公開と広報
3.効果的実施のために必要な事項
(1) 評価の充実
(2) 適正な手続きの確保
(3) 不正、腐敗の防止
(4) 援助関係者の安全確保
1.援助政策の立案及び実施体制
新しいODA大綱では、援助政策の立案及び実施に関して、ODA改革の成果を包括的に盛り込んでいます。具体的には、援助政策の立案と実施体制、国民参加の拡大、効果的実施のために必要な事項を示しています。これにより、政府全体としての連携や国民参加の拡大等により、幅広い支持が得られるような効果的なODAを実施していく考えです。以下に各項目について具体的に見ていきます。
(1)一貫性のある援助政策の立案
日本では各府省がODAに携わっていますが、それぞれが実施するODAが相矛盾することなく実施され、ODAの効果を発揮することが重要であり、そのためには政府全体が同じ政策や目標を共有し統一性を保つことが重要です。新しいODA大綱においても、「この大綱の下に、政府全体として一体性と一貫性をもってODAを効率的・効果的に実施する」としています。その具体的な施策としては、新しいODA大綱に沿った形で「中期政策や国別援助計画を作成し」、これらの政策に沿った形で、国際社会における様々な援助主体と協調・連携を図りながら、「ODA政策の立案及び実施を図る」としています。国別援助計画においては、日本の援助政策を踏まえつつ、また、被援助国の開発計画やその国の政治・経済・社会情勢に基づく開発上の課題を十分勘定した上で、「真に必要な援助需要を反映した」計画の策定を図ることを謳っています。
■国別援助計画の策定状況
国別援助計画は、1998年7月、小渕総理大臣(当時)就任後の初閣議における指示を踏まえ、同年11月の「対外経済協力関係閣僚会議」幹事会申合せに基づき、「案件選定に関わる透明性の向上の一環」としてその策定が決定されました。2000年以降、実際の計画を策定するようになりましたが、現在までに15か国に対して策定された実績があります(注1)。
上記に加え、2002年度より、対ベトナム国別援助計画の見直しと対スリランカ国別援助計画の新規策定についての作業を行い、これらについては、既にODA総合戦略会議において最終案として基本的に了承されています(注2)。また、現在、モンゴル、インドネシア、インド、パキスタンについても順次策定作業が開始されています。なお、これらの国別援助計画策定は、現地ODAタスクフォースの積極的関与の下で、有識者から構成される各国別の計画策定タスクフォースを中心とする検討、NGO、経済界、援助実施機関との意見交換、被援助国におけるワークショップなど援助に係る多様な関係者の意見を踏まえて策定することとしています。
図表I-17 ODA関係府省間連携強化のための取組

■各援助手法、分野別のバランス
日本の援助は、有償資金協力、無償資金協力、技術協力といった各種の協力形態を有しており、従来から国毎の異なる発展段階や需要に応じて、それらを有機的に組み合わせたきめの細かい援助を行ってきました。また、経済基盤整備や病院の建設など「モノ」を主体としたハード面の協力と、途上国の開発を支えていく人材の育成など人づくりや、種々の制度を整備していくための協力といったソフト面の協力とのバランスにも留意してODAを実施してきた実績があります。特に頻繁に実施されている援助形態間の連携としては、無償資金協力により建設した設備をより効果的に活用していくために、これら設備に対して日本から技術協力専門家を派遣したり、途上国の関係者を研修員として日本に招へいしたりする形です。例えば、過去において旧社会主義国の市場経済への移行を促進する目的で設置された「人材開発センター」のうち、ラオス、ベトナム、モンゴルについては無償資金協力で建物が建設され、ここを拠点として、日本より経済、日本語、交流事業等の分野の専門家を派遣して技術移転が行われています。新しいODA大綱においてもこの点は重視されており、中期政策や国別援助計画に従いつつ、それらの援助手法が「その特性を最大限活かし」、ソフト、ハード両面のバランスに留意しつつ、それらの「有機的な連携を図る」としています。