本編 > 第I部 > 第2章 > 第1節 > 3.「重点課題」-何(どのような課題)に対してODAを行うのか- > (1)貧困削減
3.「重点課題」-何(どのような課題)に対してODAを行うのか-
日本としてどのような課題に重点的に取り組むべきか、という問いに対して、新しいODA大綱では、貧困削減、持続的成長、地球規模の問題への対応、平和の構築の4つの重点課題を掲げています。なお、これら4つは、特定の「分野」ということではなく、様々な分野にまたがる分野横断的な課題として位置づけられています。特に、東ティモール、アフガニスタン、スリランカなどで既に日本が積極的な役割を果たしている平和の構築については、今回のODA大綱の改定で重点課題として新たに明記されたものです。以下では、これらの重点課題に対して、日本がどのような考え方に基づき取り組んでいくのかについて解説します。
(1)貧困削減
既に第1章で述べたとおり、貧困削減は、国際社会が共有する重要な開発目標となっており、新しいODA大綱においても、重点課題の筆頭に掲げられています。日本は、以下で紹介するとおり「教育や保健医療・福祉、水と衛生、農業」といった分野、すなわちMDGsの根幹をなす基礎生活分野における協力を重視しつつ、開発途上国の人間開発、社会開発を支援していく考えです。
また、貧困削減という課題に取り組むにあたっては、上記のような人々の暮らしに直接関係するような基礎生活分野への支援が重要であることは明らかですが、同時に、持続的な貧困削減を実現するためには、東アジアの経済発展の経験に鑑みて、経済成長を通じた貧困削減というアプローチを図る必要もあります。日本はこのような考え方に立って、貧困削減という開発目標に貢献していく考えです。
なお、日本が貧困削減を重視している点は、新しいODA大綱の重点地域に関する記述において、南アジア地域における「大きな貧困人口の存在に十分配慮する」旨明記していることや、アフリカをアジアに次いで2番目に記述していることなどにも表れています。
■ミレニアム開発目標(MDGs)に向けての取組
重点課題である貧困削減に向けて、日本は、教育や保健医療・福祉、水と衛生、農業といったMDGsに関連する分野において各種のイニシアティブを策定・発表するなどして取り組んでいます。教育分野では2002年に発表された成長のための基礎教育イニシアティブ、低所得国に対する教育分野への支援の強化、保健分野では2000年の沖縄感染症対策イニシアティブ、世界エイズ・結核・マラリア対策基金への貢献、環境や水では2003年の第3回世界水フォーラムの開催や日本水協力イニシアティブの推進、農業では、食糧援助や中長期的取組としての農業への支援などを通じた取組を重点的に行っています。2005年のMDGsの達成度についての中間レビューに向けて、今後とも貧困削減は重要な課題として国際社会において議論の継続が予想されますが、日本としては今後ともこの分野で積極的にODAを行っていく考えです(教育、保健分野における各種イニシアティブの内容については2002年版白書、本白書第II部及び第III部を参照)。