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ColumnIII-7 ニカラグアにおける小学生栄養補給計画(学校牛乳プロジェクト)

 ニカラグアの初等教育の現場では、就学対象年である7歳~12歳の小学生の多くが、仕事を理由に学校を休むという状況が続いています。彼らの親の多くも、習慣的・文化的に子どもに教育の機会を与えるより、収入源として仕事をさせることを優先させる傾向にあります。仕事をしながら学校に通う子ども達の栄養状態は悪く、また、3、4年生での不登校が最も多いのがニカラグアの初等教育現場の現状です。
 これまでにも日本はニカラグアで150校に及ぶ小学校改築を実施し、教育のハード面をしっかりとサポートしてきました。しかし、それだけでは子ども達を学校に通わせることはできません。そのため日本は、WFP(世界食糧計画)や、ニカラグアの教育省、外務省、経済振興省、農牧省、牛乳製造民間会社、牧畜農家と共に、毎日1,200校、20万人の子どもに国内産の牛乳250mlを供与するという、栄養改善のための「小学生栄養補給計画」を実施しました。
 本プロジェクトは、学校給食を通じて、子ども達に通学するインセンティブを与え、通学状況を改善することを目標としたものです。日本は2002年と2003年で計4百万ドルを支援しました。
 小学校で子どもの栄養補給を行った結果、プロジェクトの実施期間を通じて小学生の出席率は10%増加、父兄の学校行事参加率も20%増加するという大きな効果をもたらしました。さらに、牛乳を毎日学校で継続的に飲むことによって、貧困家庭の子どもの栄養改善に役立ち、また、国内で自給できる牛乳の消費習慣を身につけてもらうこともできました。さらに、これまでニカラグアの牛乳製造・販売は外国資本の企業が独占していましたが、本プログラムの結果、国内企業も牛乳の生産を始めたため、価格競争が発生し消費者にとっても良い結果をもたらしました。
 2003年には、牛乳製造業者が本計画による収入額の6%を教育省に払い戻すことに合意し、現在、ニカラグア政府自身が計画の継続を模索しています。このように、本件援助はニカラグア政府のオーナーシップの促進にも影響を与えています。また、本計画の実施にあたっては、WFPが以前から教育省と協力して実施してきたプログラムのノウハウを生かし、業務活動やモニタリングが効率的に行われたため、援助協調の視点からも良い結果を生みました。
 このようにニカラグアの教育現場では、ハード面、ソフト面の支援を組み合わせて実施することによって、より一層きめ細かい援助を実施しています。


学校給食の牛乳を飲む子ども達
学校給食の牛乳を飲む子ども達



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