ColumnII-2 大規模インフラの経済成長と貧困削減への貢献についての調査研究
ベトナムにおける「包括的貧困削減・成長戦略(CPRGS)の改訂」の作業においては、日本側によって行われた次の2つの調査研究が大きな役割を果たしました。
・政策研究大学院大学(GRIPS)の大野泉教授をヘッドとするチームによる「経済成長から貧困削減へ:ベトナムの貧困削減成長戦略における大規模インフラの役割」調査
・JBICによる「北部ベトナムにおける交通インフラプロジェクトのインパクト調査」
GRIPSチームによる調査研究は、(1)「貧困削減に資する成長」(pro-poor growth)を実現するには複数のチャネルがあること、(2)特に大規模インフラは、投資促進や地域経済の活性化がもたらす雇用・所得創出などの「市場を通ずるチャネル」及び財政収入の再配分などの「政策を通ずるチャネル」を通じて、経済成長をも介しつつ貧困削減に貢献すること、(3)大規模インフラは、地方の基礎インフラの整備などの「直接のチャネル」を通じた貧困削減策を補完するものであること、を豊富なケース・スタディの分析に基づいて示しました。また、この調査研究は、大規模インフラ整備の際にあわせ考えるべき政策課題として、「大規模インフラの効果発現を促進する措置」、「大規模インフラの潜在的にネガティブな影響を緩和する措置」、「資源配分を適切なものとするための措置」の3つを指摘しました。ベトナムのCPRGSにおける大規模インフラについての新しい章は、この研究成果を大きく反映したものとなりました。
JBICによる調査は、北部ベトナムの交通分野の円借款案件(ハイフォン港、国道5号線)のインパクト調査(国際開発センターが担当)です。この調査では、これらの交通インフラ整備が、非常に大きな投資誘致効果を生んだこと、周辺地域の家計の収入源の多様化を可能としたことなどの分析から、大規模インフラ整備の経済成長と貧困削減への貢献を具体的なデータによって示しました。(また、この調査は、上記のGRIPSチームの調査のケース・スタディの1つとしても取りあげられました。)