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ColumnI-4 貧困削減に役立つインフラ案件-大コロンボ圏水辺環境改善計画(スリランカ)-

 スリランカにおいて実施された円借款事業である「大コロンボ圏水辺環境改善計画(交換公文締結:1992年3月、承諾額:約112億円、事業完成:1998年3月)」は、洪水による都市貧困層の住居への浸水及びそれに起因する疾病の蔓延などの大きな社会問題解決のため、低地であるコロンボ市周辺地域の河川システムの改善(河川改修、遊水地整備等)によって、河川の排水機能の低下から毎年発生している洪水を制御するとともに、シャンティ(河川沿いや鉄道敷、または湿地帯等の公有地に貧困層が無権利で住居を建てて居住する地区)住民の移転促進/居住地整備によって生活環境の向上を図り、水辺環境を改善するものです。特に、シャンティ住民の移転促進/居住地整備については、移転対象者に対して[1]移転先の土地、[2]共同インフラ(水道、トイレ、排水施設、ゴミ収集箱、コミュニティセンター、街灯、道路等)、[3]住宅ローン(低所得者に対しては贈与)、[4]移転時の車両提供、[5]家屋基礎整備、[6]恒久住宅への補償費などが提供されました。
 2001年3月、JBICにより実施された事後評価では、本事業の洪水制御効果によって、[1]浸水頻度、浸水深、及び浸水時間の低下、[2]家屋・家財の損失の軽減、[3]道路交通遮断等の軽減、[4]衛生状態の向上や疾病の減少等の貧困削減への効果があったことが明らかになっており、貧困地域に住む住民の生活環境向上に大きく貢献したといえます。また、より効果的な事業実施を図るため、住民組織、NGO、自治体、援助機関等、実施機関外の多様なアクターの関与(日本からは、青年海外協力隊員、JBIC職員等も参加)により、月例会議などの開催を通じて住民の意見や提案を事業計画等に反映し、住民参加による自主的な町作りが進められました。このように貧困にあえぐ住民が、主体的にインフラ整備事業に関わることで、自己の生活の自立への可能性を実感するまでになることは、インフラ整備が単なるハード面での整備ではなく、政策改善・制度整備・人づくりも含め人々の生活に密着して存在しうることを示すものであり、貧困問題を解決する1つのヒントになるものと考えられます。

洪水対策実施前
洪水対策実施前

現在(排水施設の設置)
現在(排水施設の設置)


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