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9.デンマーク
(1)援助政策等
デンマークは85年3月にGNPの1%を援助額の目標としこれを段階的に実現するとの議会決議を行って以来、これを着実に実行し、92年以降は国連加盟国の中で唯一、ODAの対GNP比1%を毎年達成するとともに、国民一人あたりのODAでは世界一のレベルを維持してきた。しかしながら、2001年11月に発足したフォー・ラスムセン内閣(自由党・保守党連立)は、1% 原則にはこだわらずODA予算の総額を99年レベルに抑えるとの公約を実行し、2002年度のODA予算(環境ODA予算含む)を前政府の予算案から15億クローネ削減し、二国間援助の重点的対象国についてもそれまでの18か国からエリトリア、マラウイ、ジンバブエの3か国を外して15か国とした。2002年度については、政府はODAの対GNI比1%はかろうじて達成される見込みとしているが、2003年度以降のODA予算についても 99年レベルに固定するとの方針については政府与党内で一致しており、2003年度のODA予算はGNI比1%を下回る見込みとなっている。しかしながら、政府は国連が勧告する援助のGNI比0.7%の実現を重視し、他のEU加盟国がこの目標を達成するよう積極的に働きかけているほか、援助の重点を貧困削減、民主化促進、人権等に置き非援助国との対話を重視する従来からの基本方針に加え、最近では開発援助をテロ撲滅に資するよう使うことも重視している。
以上のような最近の傾向はあるにせよ、デンマークは、依然として国の規模に比べて高いレベルの援助を維持しているが、これは同国外交の基本姿勢である人道主義、人権尊重主義に基づくものである。71年には、いわゆる援助基本法にあたる「国際開発協力法」を制定している。これはODAの目的、実施機関、議会との関係、技術協力、資金協力、広報活動、文化協力、開発研究などに関し、援助のガイドラインを簡略且つ広範に定めている。
また、2000年には、開発援助の新たな指針として新戦略「パートナーシップ2000」が採択された。これは94年に制定されたODA基本方針「2000年に向けたデンマークODA戦略」を受け継ぐもので、支援対象国、分野の集約を通じた援助の効率化に重点を置き、貧困削減を開発援助の最大の目的としつつ、被援助国及び他のドナー諸国とのパートナーシップを開発援助の基盤と位置づけていることが特徴となっている。また、民主化、人権、男女平等に重点を置くとともに、紛争予防のためのイニシアティブ、HIV/AIDS対策等の分野を含む包括的な指針となっている。
政府は、上記の基本法、基本方針に基づき、今後5年間の予算を示す計画を毎年立案し、議会の承認を得ることになっている。
2001年のデンマークのODA実績(DAC報告ベース)は16億3,400万ドルで、対GNI比1.03%である。
このうち二国間援助と国際機関を通じた援助の比率は約6:4と二国間援助の割合が若干多くなっている。
二国間援助は2000年実績でアフリカ、アジア、中南米、バルカン地域の割合がそれぞれ43. 5%、19.6%、7.5%、2.9%となっており、対アフリカ援助の割合が大きい。また、デンマークは、途上国15か国(バングラデシュ、ベナン、ブータン、ボリビア・ブルキナファソ、エジプト、ガーナ、ケニア、モザンビーク、ネパール、ニカラグア、タンザニア、ウガンダ、ベトナム、ザンビア)を二国間援助の重点対象国(プログラム・カントリーと呼称)に選定し、集中的な援助を実施しているが、これらの国々の政情の変化や民主化・人権状況などを鑑み、必要に応じて援助対象国及び内容の見直しを行ってきている。
国際機関を通じた援助は、2000年実績で、UNDPに対する5,912万ドル(マルチ全体の9. 2%)を筆頭に、WFP(同6.2%)、UNHCR(同5.7%)、UNICEF(同5.2%)、UNFPA(同4.1%)等国連関係機関に2億5,100万ドル(同39.2%)、EU開発プログラム関連に9,261万ドル(同14.5%)、世銀グループに7,543万ドル(同11.8%)等となっている。なお、デンマークは96年に、拠出金の効果的活用と国際機関との効率的な連携強化を目的として「積極的な多国間主義(Active Multilateralism)」を提唱し、連携・協力の対象とする国際機関の絞り込みを行っている。
(2)援助の実施体制
デンマークにおける開発援助の計画立案及び実施は、外務省南総局が、途上国等を対象とする通常の業務に加え担当している。また、デンマークが行う国際開発援助活動はDANIDA(Danish International Development Assistance)と呼称されている。DANIDAは、従来援助の実施機関であった国際開発協力庁(外務省南総局の前身)の別称であったが、91年の組織改編により同庁が廃止されたのに伴い「Agency」を「Assistance」に変え、「援助活動」一般を指すものとして使われるようになった。
93~2001年のニューロップ・ラスムセン内閣(社会党・急進自由党連立)時代には外務省は外務大臣及び開発協力大臣の2大臣制を採用していたが、2001年11月にフォー・ラスムセン内閣(自由党・保守党連立)が成立すると、開発協力大臣のポストは廃止され、外務大臣が援助関連についても担当するようになった。
外務省南総局職員は377名(2001年末)であり、南総局の管轄する47の在外公館には在外職員・現地職員を合わせ724名が配置されている。またこのうちプログラム・カントリー(注:2001年末当時は18か国)には126人の在外職員が配置されている。
(1)ODA上位10か国
(2)地域別割合の推移(外務省分類)
(3)分野別割合の推移