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[4]プロジェクト方式技術協力

1.事業の開始時期・経緯・目的
開始時期
57年
目 的
プロジェクト方式技術協力は、途上国の人造りを中心とする事業目標の達成のため、専門家派遣、研修員受入、機材供与の3つの投入をひとつの協力事業(プロジェクト)として有機的に組み合わせながら一定期間実施するものであり、さまざまな分野で人材養成、研究開発、技術普及などを目的として協力を行っている。
近年、途上国のニーズが従来に増して多様化している状況を踏まえ、我が国はこれまで以上に、限られた資源を有効に活用し、成果重視の技術協力を行うことを目的とし、プロジェクト方式技術協力にかわって新たに「技術協力プロジェクト」という協力事業を2002年度より導入することとした。これにより、専門家派遣、研修、機材供与等の投入要素の組み合わせや投入規模、協力期間を事業の目標・成果に応じて柔軟に選択し、相手国政府の広範なニーズに応じることがより容易となる。

2.事業の仕組み
概 要
プロジェクト方式技術協力は、開発途上国の事業実施能力の確立をめざして、計画段階の調査から、実施、評価に至るまで技術移転を行いながら、5か年程度事業を運営する協力方式で、協力終了後は開発途上国の運営に引き継がれていくものである。
本協力を通じて、事業の実施に必要な技術やノウハウが、日本から派遣される専門家から相手国のプロジェクトの運営を担う管理者・技術者(カウンターパート)に移転される。この場合、効果的な移転のためには、互いの文化、社会についての相互理解を深め合うとともに、日本の技術をもとに現地に適合した技術を移転するといった視点を大切にしている。プロジェクトでは、開発途上国の経済自立発展、ベーシック・ヒューマン・ニーズの充足のための人造り協力が中心となっていたが、近年では人造りの基礎となる教育や環境、感染症、人口・エイズ、女性の社会参加(WID:Women In Development)等の地球規模の課題への協力にも重点をおいている。
これらの協力には、技術開発、訓練、普及のための特定の技術指導のみならず、移転された技術が確実に定着して、日本の協力終了後も相手国側が独自でプロジェクトを実施していく(自立発展)ために必要な組織づくりや制度造りも含まれている。
プロジェクトにおいて日本から派遣される専門家は、通常はリーダーのもとに数人でチームを構成し、指導にあたる。
研修員受入れとしては、カウンターパートが来日し、国または民間の研究機関、病院、試験場などで研修を行い、技術レベルの向上を図っている。日本での研修は、特定の技術だけでなく、これを生み出し支える社会・文化を理解できるような機会を提供している。
機材の供与は、予算上相手国による整備が困難な機材で、かつ専門家がカウンターパートに対し技術移転活動を行う際に使用する機材であり、研究開発、教育・訓練、普及等の事業に必要なものを対象としている。
審査・決定プロセス
開発途上国の開発の現状、先方の要請内容・意図を踏まえ、我が方がJICAとともに検討のうえ、実施案件を決定する。要請背景等、案件審査のための情報が不足している場合は、必要に応じて事前調査等の予備的調査がJICAによって実施され、さらに案件実施の可否について検討が行われる。
決定後の案件実施の仕組み
協力実施が決定された後は、在外公館またはJICA在外事務所を通じ、相手国に通報する。その後、JICAが派遣する実施協議調査団と相手国が案件実施のための詳細な計画について協議を行い、その内容をまとめて討議議事録(R/D:Record of Discussions)を作成し、協力の大枠を決定する。

3.最近の活動内容
概 要
2001年度の実績は、実施国数56か国、実施件数237件であった。
主要な事業
(イ) 社会開発分野では、運輸交通、海運、電気通信、上下水道などの社会基盤に関する技術訓練分野、職業訓練や初中等教育、高等教育などの教育分野、地震や洪水対策などの防災分野、ならびに環境、貧困対策など地球規模の課題に関する分野など、多方面にわたる人材育成を行っており、32か国において62件(協議議事録記載ベース)の協力事業を実施している。その例としては次のようなものがある。
    フィリピン   治水・砂防技術力強化(防災)

    ベトナム    道路建設技術者養成計画(技術訓練)

    カンボジア   理数科教育改善計画(教育)

    トルコ     海事教育向上(技術訓練)
(ロ) 保健医療分野では、地域における母子保健サービスの向上(家族計画を含む)や健康教育、風土病の予防等の活動への協力、ポリオ、結核、エイズ、マラリア、寄生虫症対策などの感染症対策、女性の役割を尊重し女性の社会参加を目指したWIDの理念や女性の性と生殖に関する健康と権利を尊重したリプロダクティブ・ヘルスの概念を取り入れた協力、医療従事者の人材育成、ウイルス等に関する基礎研究への協力、医療サービスの改善などに取り組んでおり、37か国において55件を実施している。その協力例としては次のようなものがある。
    ドミニカ共和国 医学教育(人材育成)

    ニカラグア   グラナダ地域保健強化(地域保健)

    ベトナム    バックマイ病院(医療サービス)

    タイ      国際寄生虫対策アジアセンター(感染症/寄生虫)

    インドネシア  母と子の健康手帳(母子保健)

    ザンビア    エイズ及び結核対策(感染症/エイズ・結核)

    ホンジュラス  第7保健地域リプロダクティブ・ヘルス向上(人口・リプロダクティブ・ヘルス)

    ガーナ     野口記念医学研究所感染症対策(基礎研究協力)
(ハ) 農業・畜産協力分野では、開発途上国に適した技術の大学や試験場での研究・開発、技術の農家への普及、農村振興に取り組んでおり、食糧の増産、農民の所得や生活の向上、環境に目を向けた持続的農業の実現を目指している。これらの協力は、現在、29か国において59件を実施している。
   その協力の例としては、次のようなものがある。

    エルサルバドル 農業技術開発普及強化計画(農業技術開発・普及)

    チリ      住民参加型農村改善保全計画(農業環境保全・農村振興)

    ザンビア    孤立地域参加型農村開発計画(貧困軽減)

    タイ及び周辺国 家畜疾病防除計画(広域協力)
(ニ) 自然環境保全協力分野については、人類の生存基盤であるかけがえのない自然資源の持続可能な利用と保全を、次世代のために私たちが今すぐ取り組まねばならない国際協力の重要な一分野ととらえている。2001年度は29か国で41件の協力を実施していた。
   その協力例としては次のようなものがある。

    中国      四川省森林造成モデル計画

    パナマ     運河流域保全計画

    ラオス     養殖改善普及計画

    モロッコ    零細漁業改良普及システム整備計画

    マレーシア   ボルネオ生物多様性・生態系保全
(ホ) 鉱工業開発協力
 鉱工業分野では、中小地場産業、裾野産業の振興から、基幹産業、鉱業の支援まで、幅広い分野で協力を展開している。近年は、途上国における工業化の進展に対応して、工業標準、計量標準、工業所有権などの産業面での制度整備や、企業管理、品質管理、生産性向上などの横断的な管理技術、IT人材育成などの技術に協力範囲が及んでいる。さらには環境、エネルギー問題への対応などグローバル・イシューに関する協力も実施しており、21か国において23件を実施している。
   その協力例としては、次のようなものがある。

    ベトナム    工業所有権業務近代化

    コスタリカ   生産性向上

    タイ      教育用情報技術開発能力向上

    ラオス     電力技術基準整備

    アルゼンチン  産業公害防止

    トルコ     省エネルギーセンター

    ボリビア    鉱山環境研究センター

分野別・地域別実施件数の推移


4.より詳細な情報
書籍等
「国際協力事業団年報 同資料編(国際協力事業団編著、(株)国際協力出版会編集協力・発行)」等。
ホームページ
 http://www.jica.go.jp


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