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[3]技術協力専門家派遣事業
1.事業の開始時期・経緯・目的
開始時期
55年に開始した。
経緯・目的
54年、我が国のコロンボ・プランへの加盟により政府ベースの技術協力の柱として発足した。昭和30年度に東南アジア地域に初めての専門家を派遣して以来、派遣地域は、57年度には中東・アフリカ地域へ、58年度には中南米地域へ、そして60年度には北東アジア地域へと順次拡大された。また、国連の開発援助活動に参加する等の方針から国際機関への派遣も実施している。
2.事業の仕組み
概 要
技術協力専門家派遣は、開発途上国(又は国際機関)からの個々の要請に基づき、我が国と開発途上国(又は国際機関)との間で国際約束を形成し、これに基づき実施される。各種分野の専門家は、開発途上国の受入機関(主として中央政府・関係機関、試験研究機関、教育機関、職業訓練機関等)に所属し、専門家が保有する知識・知見・技術を各分野にわたる指導、調査、研究等を通じて、相手国のカウンターパートに移転、伝達を図り、当該国の経済社会開発(国造り)の担い手となる人材の養成(人造り)に協力するものである。
また、専門家の派遣形態には、次のような特別な計画に基づいて派遣されるものもある。
(イ) チーム派遣
関係分野の専門家数人を長期、短期で複数派遣するとともに、研修員の受け入れ、機材供与を併せて実施するもの。87年度から開始。
(ロ) 研究協力
我が国の研究者と途上国の研究者が、当該途上国の開発を促進するため、共同研究を行うもので、研修員の受け入れ、機材供与を併せて実施するもの。84年度から開始。
(ハ) 重要政策中枢支援
旧政治体制からの脱却、市場経済化への円滑な移行を目指して国造りに取り組んでいるインドシナ、中・東欧、中央アジア諸国等に対して、法整備や経済諸改革等に係る重要政策の策定や制度造りを行う政府機関の中枢機関に、複数の専門家が助言、指導を行い、研修員受け入れと組み合わせた知的支援協力を行うもの。95年度から開始。
(ニ) 第三国専門家派遣
開発途上国において第三国の人材を専門家として他の途上国に派遣・活用する制度で、94年度から予算化された。我が国の実施する技術協力を補完支援し、あるいは、これまで我が国が当該第三国で実施した技術協力の成果を周辺国に普及発展させ、南南協力への支援、ひいては援助実施主体の裾野を広げることを目的とする。(中南米地域において日系人を専門家としてJICAの日本人専門家の活動現場に派遣する日系第三国専門家を含む。)
審査・決定プロセス
開発途上国(または国際機関)から在外公館を通じて我が国政府に対して正式文書をもって出された専門家派遣要請案件は、外務省、JICA及び関係省庁間で検討、審査され、当該要請案件の採択、不採択が決定される。特に近年では専門家派遣についても単に相手国の要請を個々に検討するのではなく、相手国の開発課題を十分に把握し、より総合的な視点でどのような協力が最も適切かという観点から案件の審査・検討を行っている。採択され実施が決定した案件は、翌年度の技術協力専門家派遣実施計画として、在外公館を通じて当該開発途上国(または国際機関)に通報される。
決定後の案件実施の仕組み
要請案件の実施が決まると、関係省庁或いはJICAは要請分野、指導科目、派遣時期、期間に対応した専門家のリクルートを行い、派遣前研修(派遣期間1年未満の短期専門家の場合は本人の希望により受講)を経て我が国の費用負担により派遣している。
3.最近の活動内容
活動の概要
2001年度は、112か国に2,187名(新規・継続含む)の専門家を派遣した。
地域別実績
2000年度と同様、2001年度は、アジアヘの派遣人数が最も多く、次いで中南米、アフリカ、中東、欧州、大洋州の順となっている。
主要な事業
2001年度は、2000年度に引き続き「計画・行政分野」への専門家派遣が最も大きな割合を占めた。
その背景としては、近年、法整備支援や財政・金融政策などのソフト面に対するニーズが高まっており、グッドガバナンス(良い統治)支援強化の観点からも、相手国政府の中枢機関に政策アドバイザーを派遣し、さまざまな分野での制度確立や政策立案についての支援を積極的に行っているということが挙げられる。
具体的には、インドシナ、中央アジア、東欧諸国などでは、市場経済化のための制度や政策立案が急務となっていることを踏まえ、産業政策についての協力や司法制度の確立を進めることを目的として、法整備分野で協力を実施しており、ベトナム、カンボジアなどでは、個別立法に対する助言・民法改正に対する助言・鳥瞰図作成・法曹分野の人材育成などに対して法整備分野の協力を行っている。
アジア地域の市場経済移行国以外の他の国々においても、インドネシアにマクロ経済モデル分析・資本市場育成・中小企業振興、フィリピンに証券市場監視制度などの専門家を派遣し、財政・金融分野に対し協力を行うなど、これまで同様、制度確立や政策立案支援の他、地方行政、司法、警察行政などの分野でも積極的に協力を実施している。
lT分野での協力にも力を入れており、モンゴルでは地方の中学校の1Tリテラシー向上のための専門家を派遣し、カリキュラム作成・IT教員の訓練を実施している。
また、中南米地域においては、ブラジルのマクロ経済分析機構強化、中米諸国、ジャマイカ、ブラジルの警察分野での協力などを行っている。
他方、アフリカにおいてはアフリカ開発会議(TICAD)で支援が提唱された保健医療、教育、農業分野などへの支援が強化されているほか、中東においても水、環境、教育などの重点分野への支援を継続して行っている。
加えて、我が国は2002年1月のアフガニスタン復興支援国際会議を契機に同国に対する支援を本格化しており、援助重点分野である教育、ジェンダー、保健医療分野などにおける案件形成を開始している。
個別専門家地域別派遣人数実績の推移(その1)
個別専門家地域別派遣人数実績の推移(その2)
個別専門家分野別派遣人数実績の推移(その1)
個別専門家分野別派遣人数実績の推移(その2)
4.より詳細な情報
ホームページ
http://www.jica.go.jp