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2.インド・パキスタン

98年5月、インドが地下核実験を実施しました。また、パキスタンにおいても、わが国を含む国際社会の強い自制の呼びかけにもかかわらず、同月、インドに続き地下核実験を実施しました。わが国は直ちにインド・パキスタン両国に対し強く抗議するとともに、核実験及び核兵器開発の中止、及び核兵器不拡散条約(NPT)と包括的核実験禁止条約(CTBT)への早期加入を改めて強く申し入れました。また、わが国は、ODA大綱原則を踏まえ、両国に対し、新規の円借款並びに緊急・人道的性格の援助及び草の根無償資金協力を除く新規の無償資金協力の停止等を内容とする経済措置を実施し、以降さまざまな対話の機会を捉えCTBT署名を中心とする核不拡散上の具体的進展をインド・パキスタン両国にねばり強く働きかけました。
2000年8月、森総理(当時)は南西アジア諸国を訪問し、インド・パキスタン両国首脳にCTBTの早期署名を改めて働きかけ、パキスタンのムシャラフ行政長官(現大統領)、インドのバジパイ首相及びシン外相からは、各々CTBT発効までの核実験モラトリアムの継続を確認したほか、両国ともCTBT署名についての国内でのコンセンサス形成に最大限努力することを明らかにしました。
2001年9月に発生した米国における同時多発テロに際し、パキスタンにおいてはアフガニスタン難民が流入する一方、治安状況の悪化等により経済状況の悪化が顕在化しました。これに対しわが国は、緊急の経済支援として47億円の二国間支援、公的債務の繰り延べ、国際金融機関を通じた融資への支持・支援を行うことを発表しました。
2001年10月、インド・パキスタンの核軍縮・不拡散の分野における取組の進展において、わが国の措置が相応の成果を上げたと考えられること、パキスタンを中長期的に支援する必要性及びインドに対し積極的な関与を深めていく必要性等を総合的に考慮し、この措置を停止しました。わが国は今後ともインド及びパキスタン両国に対してCTBT署名を含む核不拡散上の進展を引き続きねばり強く求めていきます。また、核不拡散分野における両国の状況が悪化すれば、本措置の復活を含め然るべき対応を検討することとしています。
パキスタンにおいては、上記経済措置を実施中である99年10月にクーデターが発生し、軍事政権が発足しました。しかし、わが国を含む国際社会がパキスタンに対して民政復帰を働きかける中、ムシャラフ大統領は、2001年8月に、翌年10月までの上下院・州議会選挙の実施を含む民主的統治へ向けた具体的なロードマップを表明し、その後、2002年10月には総選挙を実施しました。同年11月には、ジャマリ新政権が発足し、民主化プロセスは一定の進展を見せています。わが国としては、今後の具体的な援助の実施にあたっては、パキスタンの核不拡散分野の状況に加えて民主化プロセスを注視していく考えです。


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