II-3 インドシナ諸国における法整備支援
インドシナ諸国における法制度の整備に、日本のODAが大きな役割を果たしています。
ベトナムでは、86年のドイモイ路線採用以降、市場経済化と対外開放政策を推進しています。そのためには、自由で安全な経済活動を可能とする近代的な法制度整備が必要であり、旧ソ連の法制度を基礎とするこれまでの法体系を見直し、市場経済化を推進するための新たな法的枠組を構築することが急務となっています。一方で、その際、国の実情を考慮し慣習と馴染む法制度を整備する必要もあります。
このような状況を踏まえ、94年、ベトナム政府は、各種法律整備及び人材育成等についての協力を、わが国政府に要請しました。これを受け、わが国は技術協力を実施することになりました。わが国は、ベトナムの市場経済化に適合した法・司法制度の整備を支援するため、専門家を派遣して、民法等の立法作業や法体系の整備への助言を行ったり、裁判官・検察官・弁護士などを研修員として受け入れて、人材の育成に貢献しています。
カンボジアでも、91年に自由民主主義制度や市場経済体制を盛り込んだ「カンボジア紛争の包括的政治解決に関する諸協定(パリ和平協定)」を署名して以降、司法改革を緊急課題と位置づけるようになりました。
このような状況のもと、カンボジア政府は、法案起草作業・法律執行手続整備への支援として、専門家の派遣など幅広い形での協力をわが国に要請しました。これを受け、わが国は、民法・民事訴訟法の法案起草作業のコーディネーションを行う長期専門家の派遣、さらには民法・民事訴訟法起草に向けたワークショップを定期的に実施しました。また、研修員を受け入れ、法曹人材の能力強化を支援しています。これまでの協力の成果として、クメール語による民法・民事訴訟法草案が完成し、2003年3月にはカンボジア政府に引き渡される予定です。
また、ラオスでも、86年より、市場経済原理の導入を大きな柱とする経済開放化政策が進められており、市場経済化を通じた経済発展を目指す国づくりのために必要な法体系の整備が緊急の課題となっています。このようなラオスの司法分野に対しても、わが国はこれまで長期・短期専門家の派遣及び研修事業等を通じて協力を実施しています。
わが国は、明治以来、外国法を導入しつつ、自国の実情に合った法制度を確立した経験をもっており、これらの経験が開発途上国に対する法整備の支援に役立っています。今後とも、わが国の法整備支援が開発途上国の市場経済化や民主主義の発展に大いに貢献することが期待されます。
ベトナムにおける民事訴訟法セミナー