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II-1 土カマドとわら草履


日本にある昔ながらの生活用品、土カマドやわら草履が、遠いアフリカ大陸のケニアで、人々の生活と安全を支えています。94年、JICAの専門家としてケニアのビヒガ県エンザロ村を訪れた女性栄養学者である岸田袈裟さんが、この地に土カマドとわら草履を広めました。
エンザロ村には、水道も電気もありません。94年当時、村の人々は、川から汲んだ濁った水を、石を3つ置いただけのカマドで煮沸して飲んでいました。燃料は薪です。しかし、このカマドでは熱効率が悪く、燃料である薪が大量に必要であり、森林破壊の一因にもなっていました。
そこで、岸田さんは村の人々に土カマドを広めることにしました。土カマドは、石を3つ置いただけの石カマドと違い、熱効率が良いため、それまでの4分の1の薪で水を煮沸することができます。しかも、土カマドは、泥をこねるだけで簡単につくれる上に、土と石だけでできているため、お金もかかりません。カマドにある3つの口のうち、1つの口に蛇口をつけたつぼを置き、いつでも煮沸された水を飲めるようにしました。早く普及するように土カマドをつくった家には蛇口を無料配布することにした結果、土カマドはエンザロ村の300世帯からビヒガ県の8,000世帯に広まりました。
また、岸田さんは、村の子供達が裸足で生活することによって、傷口から細菌感染しているのを見て、わら草履を広めることにしました。わら草履も、バナナやトウモロコシの葉で作るので、お金はかかりません。わら草履の普及によって、細菌による感染症にかかる人の数は激減しました。
このようなちょっとした工夫によって、途上国の人々の生活に大きな改善をもたらすことができるのです。

 
使用中の改良土カマド


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