バングラデシュの経済成長や貧困削減を進める上で、電力セクターは極めて重要な役割を担っています。しかしながら、全国の電化率はいまだに約20%(2000年)に留まっているのが現状です。バングラデシュ政府も、その独立以来、特に総人口の約8割が住む農村部の電化を優先課題としてきており、77年に農村電化庁(REB:Rural Electrification Board)を設置して以降、5段階からなる全国電化プログラムを展開しています。
わが国は、世界銀行やアジア開発銀行、米国政府などとともに同プログラムの実施を支援すべく、95年、99年及び2001年と過去3度にわたって円借款を供与し、農村部への配電網の新設や改修を実施しています。
このプログラムの特徴は、農村電化庁(REB)が電力供給を受ける地域住民で構成される「農村電化組合(PBS:Palli Bidyuut Samity)」を各地域に設立し、独立採算制で配電事業の運営を任せていることです。このような住民参加型の事業実施体制は大きな成果を上げており、農村電化組合(PBS)の平均システムロス率(注)は15.6%、料金回収率は96.5%と、比較的高い水準を達成しています。
こうした農村電化事業を通じて、農村部の電化率の向上と、システムロスの削減を進めることは、農業や非農産業部門(小売店、小規模家具工場等)の生産性を向上させたり、薪の利用を抑えて森林を保護するだけではなく、女性の家事労働の軽減や夜間の勉強時間の確保、さらには雇用の創出など、農村の貧困削減に資するような幅広い効果が期待されています。
本事業を通じて電化された工場で働く女性たち