ザンビア国・首都ルサカ市周辺のジョージ地区では、住民の多くが素堀りの浅井戸に生活用水を依存していました。しかし、大半の家庭では屋外にトイレがあるため、コレラをはじめ水因性の病気がたびたび発生し、深刻な社会問題となっていました。
そこでわが国は、安全な水を供給するために、93年度から無償資金協力によって給水施設の整備を行いました。これにより、2000年4月には、対象としていたすべての地域に給水システムが整備され、常に安全な水が提供されるようになりました。地域住民の組織化や能力開発、利用者による費用負担の徹底などを同時に実施してきたこともあり、給水機関である現地法人の運営・維持管理体制も整っています。
しかしながら、こうした協力が終わった後も、給水システムの運営・維持管理能力が現地に根付かなければ、何の意味もありません。
そこで、無償資金協力事業終了後も、引き続き地域住民の参加をとりこむため、2002年2月から「開発福祉支援事業」(注1)によって「参加型給水事業」が実施されています。この事業では、JICA専門家が国際NGO(CARE International)と現地で連携し、お互いの長所を活かしつつ、住民による自律的な事業運営能力を醸成することを目的に、さまざまな活動を展開しています。具体的には、(1)公共水栓を管理する「タップ・リーダー」と呼ばれる地域住民リーダーの育成、(2)オーナーシップ(主体)意識の向上、(3)衛生教育などを実施しています。一方で、地域住民の参加を妨げるような地域特有の要因を取り除く必要もあるため、生活基盤の脆弱なタップ・リーダー(特に未亡人などの女性)を対象にマイクロ・ファイナンス(注2)の利用を可能にするためのトレーニングを実施し、起業、貯蓄等に関する能力の向上を図っています。現在では、リーダーたちがこれを利用して経済活動を行っています。また、タップ・リーダーの過半数を占める女性は、夫による家庭内暴力、幼児虐待など家庭内に問題を抱えていることから、ジェンダーのトレーニングも実施しており、参加者の原体験の文章化、問題の法的解決方法なども指導しています。
無償資金協力と技術協力スキーム間の連携や、JICAとNGOとの連携を通じて、住民参加型の協力を実施することで、より効果のある援助が期待されます。こうした連携は、従来のわが国ODAによる援助方式とは違った斬新さがあり、今後大きく発展していく可能性をもっているといえます。
給水施設整備により提供された安全な水をくむ子供たち
「タップ・リーダーと呼ばれる地域住民リーダー(過半数が女性)」(写真提供:国際協力事業団)