「なぜ援助をするのか」「どのような国際協力を行うべきか」といった問題意識を人々が共有し、ODAに対する理解をより深めていくためには、教育の場で開発途上国の抱える問題について触れる機会を取り入れることが効果的です。こうした開発教育の取組が広がっていく中で、現在青年海外協力隊が教育の場で大きく取り上げられています。
まず、青年海外協力隊の活動は2002年度から使用されるさまざまな教科の教科書で取り上げられています。特に社会科では「世界に果たす日本の役割」「ODAとしての青年海外協力隊」等のテーマでほぼすべての教科書に取り上げられています。また、英語の教科書には少年が協力隊に関してスピーチをするという設定のテキストが掲載されているものがあります。
また、青年海外協力隊OB/OGを学校、地方自治体及び各都道府県の国際交流団体等に講師として派遣する「サーモン・キャンペーン(講師出前講座)」も盛んです。2001年度は1,200件を越える講演依頼があり、講演を聴いた人は約13万人以上にも上りました。このキャンペーンは多くの人にとって開発途上国の実情を知り、国際協力について考える良い機会となっています。例えば、神奈川県のある中学校では、タイでコミュニティー開発活動に従事していた隊員OGがゲームや視聴覚教材を使って体験談を語ったところ、生徒達から「自分も募金から国際協力を始めたい」といった前向きな反響が寄せられました。
さらに、文部科学大臣の私的懇談会である国際教育協力懇談会の中間報告(2001年12月)においては、青年海外協力隊等の国際教育協力に教員が参加することにより、コミュニケーション能力が向上するとともに異文化埋解や概念化の能力が身に付き、また、わが国の教育の良い点が再認識され、帰国後に自身の経験を教育の現場に還元できるようになり、わが国の教育の質を直接的に高めるという効果があると指摘しています。
教育の場で開発途上国の抱える問題に触れ、身近なところから自分と諸外国とのつながりを理解し、「自分たちにできることは何か」を考える、このことが今必要とされている「国際協力への市民参加」につながっていくと考えています。
サーモン・キャンペーンで講師をしているタイで活動していた隊員OG(写真提供:国際協力事業団)