5月の独立に向けた国造りのプロセスが進んでいる東チモールでは、長年にわたりポルトガルによる植民地支配が行われてきました。その後、インドネシアによる実質統治の下では、政府及び民間の主要な役職はインドネシア人によって占められてきたため、東チモール人の能力開発は、これまで十分に行われてきませんでした。さらに、99年の騒乱によって、多くの分野で経験や資格を有する人材・技術者が失われたり、国外へ逃れたりして不足していることから、国造りを担うべき人材を育成することが急務となっています。こうした背景をもとにわが国はインフラ復旧、農業と並んで人材育成を重点的に支援をしています。
元青年海外協力隊員の小山正芳氏は、2001年7月から半年間にわたって東チモール大学工学部に自動車整備の専門家として赴任し、東チモール人に自動車整備の方法を教授しました。ディリ市郊外にある東チモール大学(工学部)は、99年の騒乱の際に破壊され、現在わが国の緊急無償資金協力により修復中ですので、修復が終了するまでの間ディリ市内の仮住まいで講義が行われています。インフラの7割が破壊されたといわれる東チモールでは、車の修理道具など必要な設備・機材も十分そろわないことから、現地で調達できる物資から工具・部品を作成し、自動車を修理する技術の実習を行い、工学部学生の技術の向上を図りました。東チモール人教官が「日本人の先生が来るので、日本からたくさんの援助がくると思っていたが、先生一人が来ただけで正直最初はがっかりした。しかし、小山さんは、何もない東チモールで、何もなくてもできることがあるということを学生達に教えてくれた。これは今後学生達にとって大きな自信になると思う」と語ったのが印象的でした。技術を身につけた工学部を卒業した学生達は、東チモールの国造りの担い手として大きな期待が寄せられています。
実習中の生徒たち
自動車整備の技術実習を行う小山氏