近年、世界的にHIV/AIDSが蔓延していますが、ASEAN諸国においても例外ではなく、99年末の時点で感染者・患者数は約180万人に上っています。こうした状況の中、ASEAN諸国の間では、感染症問題は一国のみの対応では不十分であり、地域レベルの対応が欠かせない、との共通認識が深まっています。APECの枠組みでも感染症に対する参加国間のネットワーク作りが進んでいますが、APECに参加していないASEAN加盟国への対策を怠れば、東南アジア地域全体の感染を効果的に予防することはできません。
これらを背景に、2001年11月にブルネイで開催された第7回ASEANサミットの際に行われた日・ASEAN首脳会議において、小泉首相が「日・ASEAN感染症情報・人材ネットワーク(JAPAN-ASEAN Information and Human Network for Infectious Disease Control)」構想を発表しました。
このネットワーク構想は、ASEAN地域においてHIV/AIDS、結核、マラリアを中心とする感染症の治療・予防に携わる人材の育成・能力開発を支援し、これらの人材のASEAN域内における協力体制を促進するために人的ネットワークの構築を支援するものです。また、日本がこれまで支援してきた保健施設を拠点に、情報のネットワークを構築することも目的としています。
具体的には、フィリピンの結核センターなどを拠点とした第三国研修やワークショップの開催、タイを中心としたマラリアを含む寄生虫対策に関する情報ネットワークの構築、といった支援を検討しています。こうした支援を行うにあたっては、ASEAN地域に対するより効果的な協力を行うため、世界保健機関(WHO)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)などの保健分野の国際機関と連携を強化することが考えられています。
日・ASEAN・感染症情報・人材ネットワーク構想