アフリカは現在、HIV/AIDSなど感染症の脅威にさらされている一方、深刻な砂漠化にも直面しています。ニジェールで展開された「カレゴロ緑の推進協力プロジェクト」は、砂漠への大規模な植林ではなく、林業と農業を組み合わせた「アグロフォレストリー」、すなわち、植林活動を通じて農民が土地を離れずに農作物の栽培を続け、地域の緑化につなげるという工夫によって、砂漠化防止、ひいては住民の生活を向上させることを目的としていました。日本は、93年から8年半にわたり、植林、野菜、果樹、村落開発という4つの分野において青年海外協力隊員を派遣し、22の村を対象に活動を続けてきました。
このプロジェクトでは、植林用に配布された苗木(8年間で約34万本)の7割が植栽されたほか、タマネギの優良品種の栽培、マンゴーの接ぎ木栽培などの技術が広まり、プロジェクト終了後も住民自身の手で造林、販売が続けられるよう人材を育ててきました。その結果、生産者の収入が増え、生活水準が向上しました。
また、燃料とする薪の消費量を減らすために改良かまどを導入した結果、薪の消費量が減り、木材の過剰な伐採を防止できたのみならず、天候に関係なく料理ができたり、薪を探しに行く時間が減って女性が子どもの育児に時間を費やせるようになりました。こうして作られた改良かまどは約1,000基にも及び、村々に普及しています。
このプロジェクトでは、地域住民の参加、啓発を重視し、身近に起こっている環境破壊や本プロジェクトの活動などをビデオを通じて学んでいく「夜間啓発活動」を毎年行っており、99年までの7年間で実施された啓発活動には、延べ3万人以上が参加しました。
ニジェール側からの評価も大変高く、2001年6月に開催された終了セレモニーの様子は、現地の新聞によって大きく報道され、ニジェール国民に協力隊活動を知ってもらう格好の機会になりました。
今後解決すべき問題もありますが、村民が緑の大切さを認識し、生活を自分たちの手で改善する意識を持ちはじめた意義は大きく、これからの村人の更なる自立的発展が期待されます。
苗木にて子供を抱く協力隊員(写真提供:国際協力事業団)
生活向上のために導入された改良かまど(写真提供:国際協力事業団)