前頁  次頁


5 サンゴ礁保全と観光の両立に向けて-パラオ国際珊瑚礁センター完成-




 パラオ共和国は、200以上の島からなる島国で、その大多数は世界有数の豊富な種類のサンゴで成り立っているだけでなく、周囲もサンゴに囲まれています。経済的自立を目指すパラオは、観光、漁業及び農業開発、中でも珊瑚礁を中心とした観光開発を最優先課題に位置づけていますが、近年の沿岸域の開発及び異常気象により珊瑚礁とその生物資源の一部に悪影響が出ていました。このため、珊瑚礁の生態系を研究し、珊瑚礁の保全について啓蒙活動を促進することが必要となっていました。
 そこで、珊瑚礁保全研究センターを設立しようとのパラオ政府の意向に対し、わが国は、95年に開催された「国際珊瑚礁イニシアティブ」により、太平洋地域における珊瑚礁研究の拠点となるよう、同センターを無償資金協力によって設立することとしました。また、同センターに対する取り組みは、地球規模の課題に日米共同で取り組むことを目的とした「日米コモン・アジェンダ」の一環としても、96年より日本・米国・パラオの三国間の協力で進めてきました。
 2001年1月に開館した同センターでは、技術協力による日本人専門家の指導の下、珊瑚礁の生態系の監視やその保全策の研究などを行うと同時に、同センター研究スタッフを研修員として日本へ招へいし技術移転を図っています。また、ミクロネシア地域の珊瑚礁モニタリング拠点として他の地域との情報交換を行うとともに、世界中の研究者に実験設備を開放しています。この他にも、一般向けの水族館が併設されており、外国人観光客や地元の小中学生など多くの来館者が見込まれています。上述のとおり、年間約7万人の外国人が訪れるパラオの最大の産業は観光であるため、同センターが新たな観光スポットとなることも期待されています。
 同センターには、観光と環境教育をはじめとする保護活動の両立や、新薬開発など珊瑚礁の資源活用拠点となることが期待されています。また、将来的には、域内の研究拠点として太平洋諸島地域での人材育成につなげていくことも検討されています。


パラオの位置


外庭に設けられた展示コーナー


建物全景



前頁  次頁