カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの5か国と中国の雲南省を流れる全長4,900kmのメコン河は、流域面積が日本の2倍以上(79.5万km2)、流域人口は約2億5千万人にも及び、その流域はさまざまな資源に恵まれています。「メコン地域開発」とは、メコン河流域のこれらの国・地域を国境をまたいで広域的に開発しようとする構想です。これを推進することで、流域諸国間の関係が強化されるとともに、ASEANの新規加盟国の底上げを通じたASEANの内部格差の是正、ひいてはASEANの統合強化が期待されます。
90年代初めのインドシナ地域の情勢安定を受けて、同地域の開発に国際的な関心が集まりました。97年のアジア経済危機により一時勢いを失いましたが、アジア諸国が経済危機から回復するのに伴い、国際的な関心が再び高まってきています。特に99年に「ASEAN10」(10か国が加盟したASEAN)を実現したASEANは内部格差の是正の観点から本件開発を重視し、また国連アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP:United Nations Economic and Social Commission for Asia and the Pacific)も、2000年6月に、2000年~2009年を「メコン地域開発協力の10年」とすることを決議しています。
わが国は、従来からこの地域の開発を重視してきました。93年1月の「インドシナ総合開発フォーラム」の設置を提案して以来、本件開発に関する推進力の維持・強化のために関連会合(閣僚会合、シンポジウム、ワークショップ等)を開催するなど、国際的なイニシアティブをとってきています。また、具体的支援としては、タイ、ラオスの両国を結ぶ第2メコン国際橋の建設のために両国に対して円借款を供与したのをはじめ、インドシナ地域を横断する運輸インフラ(道路、橋梁、港湾等)を整備する「東西回廊」関連の案件などに、ハード(インフラ整備)、ソフト(開発調査等)の両面で積極的に支援を行ってきています。
2001年7月、わが国はアジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)と共同で関係国に調査団を派遣し、その結果を踏まえて、同年11月のASEAN+3首脳会議及び日・ASEAN首脳会議で、「東西回廊」の経済回廊化および「第2東西回廊」(バンコク-プノンペン-ホーチミン道路)の整備を、今後の協力の柱としていくことを表明しました。
わが国はメコン地域開発に対するトップドナーであり、流域諸国やアジア開発銀行(ADB)をはじめとする主要ドナーと協力して開発を推進していく考えです。
メコン地域/東西回廊はどこを通っているか