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2 基礎教育改善に向けた開発パートナー事業-カンボジア・住民参加型農村地域基礎教育改善計画-



 カンボジアは、70年から20年以上にわたる内戦や暴政の結果、国内の多くの人的・物的資源を失いました。また、75年からのポル・ポト政権下では、教育施設も破壊されてしまいました。そのため、カンボジア復興に重要な役割を果たすべき人材が絶対的に不足しています。91年のパリ和平協定以降、教育分野の環境整備は、経済インフラ整備、保健衛生整備などとともに、復興政策の最重要課題の一つとなっています。しかしながら、児童数の増加に伴って教育施設の数が不足し、かつ老朽化している一方、教員の養成も追いつかないという状況が続いていました。
 このような状況を改善すべく、JICAがNGOのシャンティ国際ボランティア会(SVA)に委託して実施する開発パートナー事業として、地域住民の参加を通じて基礎教育環境を整備していくことを目的とした基礎教育改善計画を、2000年度から実施しています。
 SVAが提案した同事業では、小学校の教室のための校舎建設、校内の井戸、トイレの設置といったハード面での支援のみならず、教材が不足し教師が質・量ともに不足していることから、ソフト面での支援も行っています。ソフト面での支援として、SVAが絵本の出版・配布活動などのノウハウを活かして教師の研修、教材の充実を図り、校内に設置する図書館の運営を行っています。
 また、こうしたプロジェクトが成功するためには、地域社会の組織力の向上が欠かせません。この事業では、カンボジアの伝統に沿った形で住民参加とその体制作りを実施する際に、「開発僧」(貧困緩和、環境保全といった地域社会改善のための活動を住民とともに推進していく僧侶)の役割を重視しています。伝統的に仏教国で信仰心の篤いカンボジアでは、住民が僧侶の法話を聞くために寺院に集まるなど、寺院が文化・教育の中心的役割を果たしており、開発僧は知識人として尊敬される存在でもあります。この開発僧を育成しながら、住民のコミュニティ開発に対する意識を向上させ、住民の組織化を図っていくことが重要となっており、開発僧の研修も行われています。
 NGOのノウハウを活かした開発パートナー事業は、より住民のニーズをくみ取った事業を実施することができます。NGOなどの民間団体との連携がますます重要になる中、今後も、教育に限らず色々な分野で開発パートナー事業が活用されることが期待されます。


児童の机を組み立てている様子(写真提供:国際協力事業団)



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