前頁  次頁


資料編 > 第3章 > 第2節●二国間借款等 > 5 中小企業海外投資協力資金融資事業の概要と実績


5 中小企業海外投資協力資金融資事業の概要と実績


1.事業の開始時期・経緯・目的


開始時期


 73年、中小企業の海外投資に必要な資金について無利子融資(手数料0.75%、期間20年)を行う制度として設立された。
 その後、本制度による融資は84年に有利子となり、その時々の金融情勢の変化に対応して変遷はあったものの、経済協力への貢献と我が国中小企業の国際化の促進という目的を踏まえ、長期・低利の特色を維持しつつ現在に至っている。

経緯・目的


 70年代に入り、我が国経済の国際化が一層進展する中で、我が国中小企業の開発途上国・地域に対する投資意欲も急速な高まりを見せたが、中小企業の海外投資の実施には種々の障害を伴うものであった。(財)海外貿易開発協会では、経済協力の観点から、これらの障害を軽減し、開発途上国・地域における産業の育成や国際競争力の強化に役立つ中小企業の投資の円滑化を図るため、73年に設立された。
 本制度の創設以来、2000年度末(2001年3月末)までに、215件の投資プロジェクトに融資承諾がなされ、承諾金額は累計で189億円に達している。また、そのうち実際に投資が行われ、融資実行がなされたのが189件、融資実行額は累計で161億7,500万円となっている。融資実行案件を投資先国別に見ると、アジアが全体の89%(169件)を占め、国別では中国が26%(49件)、次いでマレーシアが17%(33件)、タイが14%(26件)となっている。

2.事業の仕組み


概 要


 本事業の実施に当たっては、経済協力の観点から、発展途上国・地域の政府又は公的機関から歓迎、奨励されている事業であることを、融資対象の基本要件としており、具体的には、以下の融資条件により運営している。
●対象企業:開発途上国において海外投資事業を行う日本の中小企業。
●金  利:年0.7%(2001年4月現在)
      (*)なお、金利は長期プライムレートより1.2%低い率として、年1回ごと年4月に決定。
●貸付対象:出資及び貸付による投下資金
●融資比率:投下資金の2/3以内
      (*)LLDCの場合は4/5以内。
●融資金額:上限3億円
●融資期間:最長20年(うち据置期間3年)
●保  証:本制度の融資にあたっては銀行保証が必要

審査・決定プロセス


 融資の手続きは、窓口相談→計画書等提出→国内実査→審査委員会による審査→契約締結→貸付の実行→事後管理、の順序で行われる。
 個別案件の審査にあたっては、経済協力の目的に鑑み、
●投資受入国・地域の雇用機会の増大、原材料の活用、輸出の振興等、経済社会の発展に寄与するものであること、
●事業の実施によって、環境の保全に支障を生じないこと、
●我が国との貿易の振興、等により経済交流の円滑化に資すること、
 等のポイントが、窓口相談の段階から吟味される。さらに当該融資申込企業を職員が実地に訪問して国内実査が行われた後、外部有識者等に諮問され、そのとりまとめ結果を踏まえて当該案件への融資の諾否が決定される。

決定後の案件実施の仕組み


 融資が決定後、ただちに、融資申込中小企業と(財)海外貿易開発協会との間で金銭消費貸借契約が締結され、融資金が当該企業の銀行口座に振り込まれる。
 貸付実行後の事後管理として、融資された資金が日本の融資先企業(親会社)による現地送金を書類で確認する。以後、投資会社設立報告書や設備完成報告、等の提出を求め現地プロジェクトの進捗状況を把握する仕組みとなっている。
 さらに、完済までの融資期間中は、毎年、現地設立企業および日本の親企業の決算報告を受け、種々の経営相談にも応じるなど、当該プロジェクトの長期にわたる健全な発展を側面的に支援する体制となっている。

3.最近の活動内容


 99年度~2000年度の2年間における本制度による融資承諾案件は18件で、融資承諾累計は19億3,200万円となっている。このうち、実際に投資に至った17件のプロジェクトに対して、合計18億3,200万円の融資が実行された。

図表-146 中小企業海外投資協力資金融資事業の99年度、2000年度融資実績

中小企業海外投資協力資金融資事業の99年度、2000年度融資実績



前頁  次頁