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35 アジア地域等の調査研究等事業の概要と実績


1.事業の開始時期・経緯・目的


開始時期


 60年7月、特殊法人として発足。
 98年7月、日本貿易振興会(ジェトロ)と統合。
 99年4月、事業名称変更

経緯及び目的


 60年、アジア経済研究所は、「アジア経済研究所法」に基づき、アジア地域等との貿易の拡大及び経済協力の促進に寄与することを目的とする特殊法人として設立された。
 98年7月には、「アジア太平洋地域等との通商経済上の協力体制の整備等を図る観点から、アジア経済研究所と日本貿易振興会とを統合する」との閣議決定(平成7年2月24日)に基づき、日本貿易振興会と統合し、貿易・投資振興並びに地域・開発・経済協力研究を推進する新ジェトロの附置研究機関として位置づけられた。
 日本貿易振興会アジア経済研究所は、引き続き、アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカ、オセアニア、東欧諸国の経済、政治、社会に関する諸問題について基礎的かつ総合的な調査研究を行い、その成果を普及し、もってこれらの地域との貿易の拡大及び経済協力の促進に寄与することを目的としている。
 また、「国の行政機関等の移転について」の閣議決定(昭和63年7月19日)に基づき、99年8月に千葉市幕張地区において新施設が竣工し、同年12月移転が完了した。

2.事業の仕組み


概 要


 日本貿易振興会アジア経済研究所の事業は次の4本柱からなっている。
(イ)調査研究:開発途上国・地域を対象とする現地主義、実証主義に基づく基礎的総合的調査研究
(ロ)研究交流:国際、国内共同研究、研究交流活動の拠点としての場の提供
(ハ)資料情報:開発途上国・地域に関する図書、雑誌、地図、法令、統計など各種資料を収集し、社会に提供する資料情報センターの運営
(ニ)開発研修:開発途上国・地域の経済社会開発に携わる人材を育成する経済開発研修事業の運営
 これらの活動により、開発途上国・地域の諸問題を的確に分析・解明し、その成果を国内外に広く普及し、増大するニーズに応えている。
 「政府開発援助日本貿易振興会事業費補助金(経済協力費計上分)」は、上記活動を遂行するための事業費、その事業活動に従事する職員の人件費、組織運営のための管理費に係る経費に充当されており、その全てがODA予算として計上されている。

審査・決定プロセス


 日々のレファレンス内容及び調査研究懇談会における意見等により最新の社会的ニーズを把握し、それらを踏まえた上で調査研究方針を決定する。それに基づき提出される各調査研究課題案を研究企画委員会において審査し、最終的に研究所が決定する。

決定後の案件実施の仕組み


 各調査研究課題をベースに研究会を組織し、研究会活動、海外共同活動、現地調査、資料収集等を実施し、その研究成果を報告書等として刊行する。

3.最近の活動内容


概 要


(イ)調査研究
 開発途上国・地域及び開発問題に関する基礎的かつ総合的研究、政治・経済動向分析、経済協力調査、統計解析等の調査研究を実施した。
(ロ)国内外との研究交流
 国際研究交流促進、在外職員派遣及び海外客員研究員受入の各事業を行い、海外との研究交流及び海外における研究を一層深めた。
(ハ)資料・統計の整備
 開発途上国・地域の資料情報センターとして、対象地域に関する基本的文献、新聞、雑誌などの最新資料・情報等を収集し、これらを閲覧、複写サービス等により利用者に提供した。
(ニ)成果普及
 調査研究及び資料・情報活動などの成果を国内外に広く普及するため、定期刊行物、単行書等を刊行するとともに、講演会及びプレスリリース等を行った。
(ホ)経済開発研修
 開発途上国・地域の経済開発に携わる人材を育成するため、日本人及び外国人研修生を受入れ研修を実施した。

地域別実績


 日本貿易振興会アジア経済研究所は、その目的にあるように、基礎的・総合的研究の実施、資料収集活動等を行う社会科学系の研究機関であり、当該補助金は、日本の経済協力関係統計では、全て政府開発援助の中の技術協力として計上されてはいるものの、二国間協力としての資金協力、技術援助活動等を行うものではない。
 ここでは、研究会数、客員研究員受入数、講演会開催回数等を地域別に計上する。

図表-136 地域別実績の推移

地域別実績の推移


主要な事業


 主要な事業としては、(イ)調査研究事業、(ロ)国際研究交流事業、(ハ)統計・研究資料整備事業、(ニ)機動分析情報事業、(ホ)成果普及事業、(ヘ)経済開発研修事業費があるが、その実績は下表のとおりである。



(イ)調査研究事業
 (1)地域基本課題研究
 開発途上国に関する基本的な課題(「金融・経済再生への挑戦/東アジアの経験と課題」等)について、国・地域別、事項別に調査研究を実施した。
 その成果を定期刊行物(「アジア経済」、「The Developing Economies」)、研究双書等として刊行した。
(11年度:「カンボジアの社会経済制度」等)
 (2)動向分析研究
 アジア諸国等を対象として、これら諸国等のカレントな情報に基づき国別の動向分析を行い、その成果を「2000アジア動向年報」として刊行した。
(99年度:「1999アジア動向年報」)
 (3)国際産業構造分析
 ASEAN5か国(タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール)、韓国、台湾、中国、日本及び米国を含めた「1995年アジア国際産業連関表」を完成させた。
(99年度:「1995年アジア国際産業連関表」作成作業継続)
 (4)三地域等総合研究
 中東、中南米及びアフリカ諸国の経済・政治・社会問題等に関する総合的研究(「ラテンアメリカの社会保障政策」等)及び資料収集を実施した。その成果を定期刊行物(「現代の中東」、「ラテンアメリカレポート」、「アフリカレポート」)、研究双書等として刊行した。
(99年度:「ラテンアメリカにおける経済自由化と雇用関係の変容」等)
 (5)地方連携研究
 地方の国際化、地域産業振興策の国際比較、地域間交流・ネットワーク形成等に関する研究(「京浜臨海部とアジアとのネットワークの形成に向けた調査研究」)を地方自治体(神奈川県)と共同して実施し、その成果を調査研究報告書として刊行した。
(99年度:千葉県「21世紀の千葉-グローバリゼイションと経済情報化」)
 (6)21世紀の開発戦略研究
 我が国及び東アジアの開発経験の分析をふまえ、政府の役割、産業組織、生産・金融に焦点を当てながら政治経済システムの異なるアジア諸国等の開発戦略を分析、展望し(「開発政策の展望:市場・制度と政府の役割」等)、その成果を研究双書等として刊行した。
(99年度:「開発主義下の国家と経済-経済成長の制度・組織要因分析」等)
 (7)経済協力総合研究
 我が国の経済協力に資するため、地域研究、開発研究を踏まえて、開発途上国を対象に、貿易・投資の自由化等によるグローバリゼーションの中での官民の経済協力のあり方について、「アジア通貨危機と援助政策の新潮流」等をテーマに総合的な観点から経済協力研究を実施した。その成果を「経済協力シリーズ」等として刊行した。
(99年度:「アジア国際分業再編と外国直接投資の役割」等)
 (8)経済協力と法制度研究
 急速に変容する法制度の現状把握、多面的分析、国際比較等の項目について、アジア諸国の経済法と制度の問題を内外の研究者、研究機関と共同研究を実施し、アジア法ネットワークを整備することに努めた。更に、その成果を報告書として刊行した。
(新規事業:「開発と法:アジアの経済開発と社会開発」等)
(ロ)国際研究交流事業
 (1)ASEAN等経済開発政策現地研究
 ASEAN諸国等に派遣した調査員を主査として、当該国の専門家と研究会(「フィリピンにおける自由化政策と経済発展」等)を組織し、多角的・総合的な観点から経済開発政策研究を実施した。
 その成果を「ASEAN等現地研究シリーズ」として刊行した。
(99年度:「インドネシアにおける通貨危機の要因とその対策」等)
 (2)先進諸国間研究交流
 開発途上国の経済開発問題等を研究している先進諸国の研究機関(ケンブリッジ大学、テキス大学)と共同研究(「国際分業の新潮流~グローバル化・ICT革命の途上国経済への影響と課題」)を実施し、その成果を報告書として刊行した。
(99年度:「途上国インフラ整備の民間活用」ケンブリッジ大学、フロリダ大学)
 (3)海外客員研究員受入
 開発途上地域の研究者等(中国等13名)を招へいし、研究会への参加、比較研究、意見交換等の研究交流を行い、相互に調査研究の深化、促進を図った。
 その成果を「Visiting Research Fellow Monograph Series」として刊行した。
(99年度:インド等8名)
 (4)シンポジウム開催
 国際シンポジウム「中国のWTO加盟-グローバル・エコノミーとの共生を目指して」を開催し、その成果を「IDE Symposium Proceedings」として刊行した。
(99年度:21世紀の発展途上国:グローバル化への挑戦」)
 (5)国際研究交流促進
 開発途上国の研究機関代表者等(韓国:韓国学術院会長)を招へいして、経済開発研究に関する意見交換等を行った。
(99年度:「韓国:韓国企画予算省財政企画局長」等招へい)
 (6)在外職員派遣
 職員(25名)を海外の大学、研究機関等に長期派遣し、調査研究、現地語の修得、現地事情の把握及び派遣地諸機関との連絡等を行った。
(99年度末:25名)
(ハ)統計・研究資料整備事業
 (1)統計作成・統計資料整備・情報システム等
 開発途上国・地域の統計資料及び、国際機関の編集する各種統計機械可読データを収集・整備し、調査研究活動の利用に供した。
 情報システムでは、情報システムの基盤整備に努めると同時に、ワーク・フローを導入し業務の効率化を図った。
 (2)アジア工業圏経済予測
 ASEAN諸国(カンボジア、ブルネイ、ミャンマー、ラオスを除く。)、東アジアNIEs、中国及びインド等を対象としてマクロ計量経済モデルに基づいた経済予測を行った。
 その成果を、プレス・リリースするとともに、報告書として刊行した。
 (3)研究資料整備
 開発途上国の経済等に関する図書、雑誌、新聞、地図、マイクロ・フィルム等を収集・整備し、外部閲覧者の利用に供するとともに、複写サービスを行った。
(ニ)機動分析情報事業
 緊急及び特定テーマに関して機動的に対応する調査研究(「中国の内陸開発戦略-“西部大開発”のゆくえ」等)を実施し、その成果を「アジ研トピックリポート」及び「IDE Spot Survey」として刊行した。
(99年度:「中国の金融改革とマクロ経済の安定性」等)
(ホ)成果普及事業
 (1)研究成果普及活動
 研究所の諸活動の成果を国内外に普及するため、「アジ研ワールド・トレンド」の刊行、講演会の開催及び発展途上国研究奨励賞の表彰等を行った。
 (2)資料・情報の提供
 開発途上国・地域に関する諸事情、参考文献等についてレファレンス・サービス等を行い、外部利用者に提供した。
(ヘ)経済開発研修事業
開発途上国の経済社会開発等に参画する高度な学識を有する人材の育成を行った。また、人材養成のための国際セミナー「APEC参加国・地域における国際人口移動と構造変動」を開催した。
(99年度:「APEC参加国・地域における国際人口移動と人材養成」)

4.より詳細な情報


書籍等


 アジ研ワールド・トレンド(月刊)等、定期刊行物を発行している。
 発行している刊行物については、下記のホームページに一覧として示している。

ホームページ


 http://www.ide.go.jp


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