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17 開発調査事業の概要と実績


1.事業の開始時期・経緯・目的


開始時期


 62年に海外技術協力事業団(国際協力事業団の前身)が設立された際に、外務省の委託調査を引継ぎ、さらに通商産業省から海外開発計画調査が委託され、政府ベースによる技術協力の一環としての開発調査事業が形成された。

目 的


 開発調査事業の目的と意義は次の通りである。
(イ) 政策及び開発計画の策定支援
 対象プログラム/プロジェクトについての調査を実施し、開発途上国の社会・経済発展に資する政策及び公共的な各種事業の開発計画の策定を支援する。
(ロ) 技術移転
 調査の過程で、現地での技術指導、セミナー等を通じて技術移転を行い、開発途上国の人材育成に貢献する。
(ハ) ODAの統合的運用の基礎
 調査報告書等により提言された内容は、我が国や他のドナーに対する技術協力及び資金協力要請の基礎資料となり、ODAの統合的運用の基礎としての役割を果たす。

2.事業の仕組み


概 要


 開発調査事業は、開発途上国の開発計画に対し、学識経験者やコンサルタント等からなる調査団を派遣して現地協議/調査(データ収集等)と国内での分析作業の上、計画を策定し、調査に係る提言を行う。
 主な事業の種類と内容は次の通りである。
(イ) 政策支援
 旧社会主義国の市場経済化や開発途上国の経済自由化政策を支援するための基本戦略、実行計画を策定する調査(政策支援調査)等を実施する。
(ロ) セクター・プログラム開発調査
 相手国の特定セクターを対象として、先方政府や他ドナーとのコーディネーションを行いつつ、セクタープログラムを策定するとともに、当該セクターに対する我が国技術協力・資金協力の実施調整を行うもの。
(ハ) マスタープラン調査(M/P)
 各種の開発計画の総合基本計画を策定するための調査で、全国または地域レベルあるいはセクター別の長期計画を策定する。
(ニ) フィージビリティ調査(F/S)
 個々のプロジェクトが技術的、経済的、社会的に、さらには環境等の側面から見て実行可能であるか否かを検証し、最適な事業計画を策定する。
(ホ) 実施設計調査(D/D)
 プロジェクトの工事着工に必要な設計図、工事仕様書、入札関係書類等を作成する。フィージビリティ調査よりも高い精度で、設計図面作成や、工事費積算を行う。
(ヘ) 基礎・資源調査
 開発計画の策定で基本的な資料となる地形図の作成や、地下水資源の賦存量調査、利用計画の策定等を行う。また森林資源、水産資源、鉱物資源等の資源賦存状況を把握し、資源の管理および保全に資する調査を実施する。

審査・決定プロセス


 我が国の在外公館を通じて要請が提出された案件の中から、我が国援助政策との整合性、プログラム/プロジェクトの内容、効果、事業化計画等について検討を行い、実施案件を選定する。

決定後の案件実施の仕組み


 案件の実施決定後は、国際協力事業団(JICA)が実際の調査事業を行う。
 JICAは通常、専門家等からなる事前調査団を派遣して開発途上国の政府機関と調査内容等についての協議を行い、調査範囲、内容、方法等を定めた実施細則(Scope of Work)を交換する。その後はJICAが、コンサルタントを選定して実施細則に基づく調査を実施し、提言内容等に関する調査報告書が途上国側に提出される。

3.最近の活動内容


概 要


 2000年度は、各種の調査をあわせて計521件を実施した。

地域別実績


 引き続きアジア地域の割合が他の地域に比べ高く、その他の地域においては、ほぼ昨年度と同程度の実績となっている。

図表-120 地域別実績の推移

地域別実績の推移


主要な事業


 2000年度実施した主な分野及び案件の例は次のとおり。
 政策支援分野の例として、ベトナムで、同国の市場経済化に向けた中長期的な政策立案を行う「市場経済化支援開発政策調査」を実施したほか、中国では住宅金融制度の現状分析と改善に向けた政策提言を行う「住宅金融制度改革支援調査」を実施中である。
 セクタープログラム型開発調査の例として地方開発における農業分野の役割に焦点をあてた「タンザニア地方開発セクタープログラム策定支援」及び、初等教育セクターにおける政府のオーナーシップ強化及び我が国投入の効率化を主眼とした「ベトナム初等教育セクタープログラム開発調査」を実施中である。
 防災対策及び災害復興支援の例として、トルコで発生した大地震を背景に、防災の観点を考慮した都市計画策定を行う「イスタンブール地震防災計画基本調査」を実施した。
 社会的開発(保健・教育等)分野の例として、ラオスで地方における保健医療サービスの向上を図るための「保健医療サービス改善計画調査」を実施したほか、タンザニアにおいては、地方の教育計画の策定を行い地方教育行政の強化を支援する「スクールマッピング」を行った。
 また、資金協力との連携を促進する観点から、円借款による事業化を想定した実施設計調査を引き続き行っており、インドネシアでは、我が国 ICT支援にも関連し、税関総合データベース及び通関システム構築のための「税関システム整備調査」や、エルサルバドルでは、港湾建設により輸送力の向上、開発の遅れた地域の発展を図る目的で「ラ・ウニオン県港湾再活性化計画」等を開始した。
 二国間協力のみならず複数国に跨る広域地域の持続的開発に寄与する目的でも事業を実施しているが、その例として、メコン河委員会に対し、メコン河流域の4か国を対象とした水量規制についての策定・提言を行う「メコン河委員会水文モニタリング計画調査」やザンビア及びボツワナを結ぶ国境橋梁建設のための「ザンベジ川カズングラ橋建設計画」を実施した。
 鉱工業分野の例では、再生可能エネルギー分野関係で多くの要請があり、「モンゴル再生可能エネルギー利用地方電力供給調査」や「ボツワナ太陽光発電利用地方電化計画」等を実施した。また、環境分野関係で「フィリピン有害産業廃棄物対策(フェーズ1)」や「バンコク首都圏及び周辺における産業廃棄物管理マスタープラン」、鉱物ポテンシャル把握のために「ペルー南部地域鉱物資源広域調査」等を実施した。

図表-121 分野別実績の推移

分野別実績の推移


4.より詳細な情報


ホームページ


 実績については下記にも掲載している。
 http://www.jica.go.jp/jsearch/khc_f.html
 予定案件の概要については、下記に掲載している。
 http://www.jica.go.jp/country/betto/btsl.htm


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