資料編 > 第3章 > 第1節 > 16 プロジェクト方式技術協力の概要と実績
57年
プロジェクト方式技術協力は、途上国の人造りを中心とした特定の事業目標の達成のため、専門家派遣、研修員受入、機材供与の3つの投入をひとつの協力事業(プロジェクト)として有機的に組み合わせながら一定期間実施するものであり、さまざまな分野で人材養成、研究開発、技術普及などを目的として協力を行っている。
プロジェクト方式技術協力は、開発途上国の事業実施能力の確立をめざして、計画段階の調査から、実施、評価に至るまで技術移転を行いながら、5か年程度事業を運営する協力方式で、協力終了後は開発途上国の運営に引き継がれていくものである。
本協力を通じて、事業の実施に必要な技術やノウハウが、日本から派遣される専門家から相手国のプロジェクトの運営を担う管理者・技術者(専門家のカウンターパートと呼ぶ)に移転される。この場合、効果的な移転のためには、互いの文化、社会についての相互理解を深め合うとともに、日本の技術をもとに現地に適合した技術を移転するといった視点を大切にしている。プロジェクトでは、開発途上国の経済自立発展、ベーシック・ヒューマン・ニーズの充足のための人造り協力が中心となっていたが、近年人造りの基礎となる教育やさらには環境、感染症、人口・エイズ、女性の社会参加(WID)等の地球規模の課題への協力にも重点をおいている。
これらの協力には、技術開発、訓練、普及のための特定の技術指導のみならず、移転された技術が確実に定着して、日本の協力終了後も相手国側が独自でプロジェクトを実施していく(自立発展)ために必要な組織づくりや制度造りも含まれている。
プロジェクトにおいて日本から派遣される専門家は、通常はリーダーのもとに数人でチームを構成し、指導にあたる。
研修員受入は、カウンターパートが来日し、国または民間の研究機関、病院、試験場などで研修を行い、技術レベルの向上を図っている。日本での研修は、特定の技術だけでなく、これを生み出し支える社会・文化を理解できるような機会を提供している。
機材の供与は、予算上相手国による整備が困難な機材で、かつ専門家がカウンターパートに対し技術移転活動を行う際に使用する機材であり、研究開発、教育・訓練、普及等の事業に必要なものを対象としている。
開発途上国の開発の現状、先方の要請内容・意図を踏まえ、我が方がJICAとともに検討のうえ、実施案件を決定する。要請背景等、案件審査のための情報が不足している場合は、必要に応じて事前調査等の予備的調査がJICAによって実施され、さらに案件実施の可否について検討が行われる。
協力実施が決定された後は、在外公館またはJICA在外事務所を通じ、相手国に通報する。その後、JICAが派遣する実施協議調査団と相手国が案件実施のための詳細な計画について協議を行い、その内容をまとめて討議議事録(Record of Discussions;R/D)を作成し、協力の大枠を決定する。
2000年度の実績は、実施国数58か国、実施件数248件であった。
(イ) 社会・鉱工業開発協力分野では、道路交通、港湾、海運、住宅、電気通信などの社会基盤(インフラ)関連、職業訓練、労働安全衛生、環境、防災、教育、貧困に関する地球規模の課題並びに開発途上国の中小企業の振興さらには、将来の経済発展を担う基幹産業の育成・強化等の課題に対応するために必要な人材の養成に関する協力を行っており、34か国において100件(協議議事録記載ベース)を実施している。その協力例としては次のようなものがある。
インドネシア 火山地域総合防災(社会基盤)
ベトナム 日本人材協力センター(教育)
チュニジア 電気電子技術者育成計画(職業訓練)
ケニア アフリカ人造り拠点(教育)
ベトナム 工業所有権業務近代化(産業基盤)
コスタリカ 生産性向上計画(中小企業振興)
トルコ 省エネルギーセンター(エネルギー)
(ロ) 保健医療分野では、医学教育病院、看護学校等における医療従事者の人材育成、地域における家族計画を含む母子保健サービスの向上、健康教育、風土病の予防等の活動を行い地域の保健衛生の改善を図る協力、臨床医療水準の向上を図る協力、ポリオ、結核、エイズ、寄生虫症対策などの感染症対策、女性の役割を尊重し女性の社会参加を目指したWID(Women In Development)の理念や女性の性と生殖に関する健康と権利を尊重したリプロダクティブヘルスの概念を取り入れた協力などに取り組んでおり、35か国において56件を実施している。その協力例としては次のようなものがある。
ドミニカ共和国・医学教育(医学・看護等教育)
ニカラグア・グラナダ地域保健強化(地域保健)
ベトナム・バックマイ病院(医療サービス)
タイ・国際寄生虫対策アジアセンター(感染症/寄生虫)
ラオス・小児感染症予防(感染症/ポリオ)
ザンビア・エイズ及び結核対策(感染症/エイズ・結核)
ホンジュラス・第7保健地域リプロダクティブヘルス向上(人口・リプロダクティブヘルス)
ガーナ母子保健医療サービス向上計画(医療制度改善)
(ハ) 農林水産業協力分野では、開発途上国に適した農林水産技術の開発、農業普及員の育成、大学や試験場での研究技術の向上、森林・水産資源の保全と適切な利用を図ることにより食料の増産、農民所得や生活水準の向上、これに関連した地域格差の是正、資源の有効利用、環境保全などの協力に取り組んでおり、41か国において92件を実施している。
その協力例としては次のようなものがある。
フィリピン 高生産性稲作技術研究計画(食料増産)
ボリビア 小規模農家向け優良稲種子普及計画
インドネシア 生物多様性保全計画(フェーズ2)(自然環境保全)
インドネシア 淡水養殖振興計画(所得向上)
図表-119 分野別・地域別実施件数の推移

「国際協力事業団年報 同資料編(国際協力事業団編著、(株)国際協力出版会編集協力・発行)」等。
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